「さまざまなものが“つながり”活躍できる地域づくり」を目指して。
Q:中之条町の地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。
A:茨城県桜川市出身で、現在、宇都宮大学地域デザイン科学部コミュニティデザイン学科の4年生です。大学では、主に地域づくりやまちづくりを学んでいて、中之条町に移住する前には、週の半分は福島県の奥会津で暮らし、2拠点生活をしていました。
中之条町との縁は、コロナ禍で大学の授業が全てオンラインだった2020年の5月頃、この町で開催されたオンライン研修会に参加したのが最初です。プロジェクト・サイクル・マネージメント(PCM)という地域づくりなどプロジェクト計画の手法を学ぶ研修会でした。
その年の秋からは、中之条町も入れて3か所で順番に暮らす生活を続け、地域おこし協力隊に応募して採用していただきました。大学3年生の4月から隊員として着任。大学の勉強の一環として取り組んでいるので、この町に移住してからも行き来する生活を続けています。
Q:実際の活動内容について教えてください。
A:協力隊としてのミッションは農業振興です。当初は農作業の手伝いなどから始めましたが、僕に求められていることは農業人口を増やすこと。新規就農する人の間口を広げるために、まず関係人口から増やしていこうと考えました。
そこで、地元の農家さんたちと一緒に、「人とモノ、個性と個性、若者とジジイ、さまざまなものが“つながり”活躍できる地域づくり。」をコンセプトにしたNPO法人「中之条コネクト」を立ち上げました。今は事務局として運営を担っています。
1年目には、中之条町に興味を持ってもらうための研修会を5回実施。その活動の中で、役場の林業振興係から地域プロジェクトマネージャーを募集したいという相談があり、採用のフローを作成したこともあります。
2年目には、地域おこし協力隊という立場で、農業振興係と一緒にインターンシップを企画して、隊員の募集にも関わらせていただきました。隊員の中から就農する人が出てくればいいなという思いで進めています。今年8月には、都内から高校生の農業インターンの受け入れも始めました。
中之条町の農業は、大量生産地に比べると規模は小さいけれど、逆にいろんな作物が収穫できます。町の農産物を発信するために、各農家さんのウェブサイト作りも進めています。
Q:他の隊員との関係はいかがですか?
A:現役大学生の隊員は、群馬県では僕が初めてのケースのようですが、今年から栃木県にもう一人、大学生の隊員が採用されました。僕と同じような立場でフットワークも軽く、彼とはよく情報交換しています。
また、地元農産物を広めるための活動など一人では進められないことには、今年から着任した隊員と一緒に取り組んでいます。
県内では、桐生市OB隊員の岩崎さんが、僕のモデルとなる人です。いろいろ教えていただいて、活動の参考にさせていただいています。
Q:中之条町の印象や暮らしてみての感想を教えてください。
A:いい人がたくさんいる印象です。関わる人が僕をうまく使ってくれるし、僕も使わせてもらっています。この町で暮らして困ったことはないし、逆に助けていただく場面が圧倒的に多いですね。農家さんや事業者さんなど、僕のやりたいことを一緒にやってくださる受け皿ができていて、役場もそれを後押ししてくださる。僕の活動は受け入れ側ありきなので、感謝することばかりです。
いくつかの地域をフィールドワークして思ったのは、外から来た人を受け入れることに慣れていない地域がすごく多いということ。一方、中之条町の場合は半慣れくらいだと感じています。ですから、徐々に外から来た人に慣れてもらうことに3年間を使い、実際に受け入れていくのは3年後くらいからかなと考えています。
Q:今後は、どのように活動していく予定ですか?
A:3年間はものすごく短くて、ある程度無理して活動しないと目標には届かないと思います。協力隊インターンシップやお試し協力隊などを企画して、町外から人を集める方法はかなり確立してきましたが、町内へのアプローチがまだ足りていません。町の人たちが協力隊をうまく使えるような仕組みを作るのが、残りの期間の目標です。そして、次期の協力隊員がその仕組みの中で活動できるようになればベストですね。
3年目に当たる来年度は大学院に進学し、院生として活動を続ける予定です。今も大学の仲間と、外から人を受け入れるための土壌づくりを進めていますが、もっともっと大学生が地域に入って活動できるようにしたいと思っています。
Q:これから隊員を目指そうと思っている人へのメッセージをお願いします。
A:自治体が隊員に求めていることは、募集要項を読んだだけでは十分にはわかりません。応募する前には、実際に現地に行って、自治体の担当者と会ってじっくり話をしてから決めることをお勧めします。
僕の場合は、この町にいろいろやりたいことがある人がいて成り立つ活動ですが、基本的には自分がやりたいことが9割。担当者がそれを理解してくれて、動きやすいように行政側からバックアップしてくれています。僕自身も、担当者や関係者と話をする中で、何を必要とされているかを読み取ることで、いい関係を築けているのだと思っています。
(取材日:2022/9/14)