隊員&OB・OGインタビュー

キャンプ場から黒保根地区の魅力を発信し、地域の活性化に役立ちたい。

桐生市 飯塚裕晃さん 活動2年目(2019年12月~)

Q:桐生市の地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。

A:出身は埼玉県所沢市で、以前は在宅介護や認知症専門病院で20年近く働いてきました。東日本大震災を機に都会の暮らしに疑問を持つようになって、環境や農業に関わりたいと、地域環境事業の仕事にも3年ほど就きました。勉強にはなりましたが、企業に所属しての活動には限界があります。「都会に答えはない。自分の本当にやりたいことは移住しないと実現できない」と思っていたとき、地域おこし協力隊の制度を知ったのがきっかけです。

ここを選んだのはキャンプ場が決め手です。趣味のキャンプや登山、アウトドアなどに関する募集を探して見つけました。それまでも、赤城山の頂上には何度も登ったことがありましたが、頂上が桐生市の黒保根地区だってことを初めて知ったんです。しかも「利平茶屋キャンプ場」と「花見ヶ原キャンプ場」、2つも素晴らしいキャンプ場があることがわかり、赤城山の麓に住んでキャンプ場で働きたい!と思って応募しました。

Q:実際の活動内容について教えてください。

A:着任したのが一昨年の12月。真冬でキャンプ場は閉まっていました。実は僕、冬キャンプが好きで、すぐにでも始めたいと思ったのですが、水道も止まっているし無理だと。そこで、1年目は冬のキャンプ場の様子を写真撮影して、毎日ブログやSNSで発信しました。

都会の人からはけっこう反響があったのですが、キャンプ場の活動だけでは地域の方と関われません。これではいけないと思って、先に農業を始めていたもう一人の隊員と一緒に農作業も始めたところ、地域の方から声をかけていただけるようになりました。

4月にはコロナの緊急事態宣言が発令され、待ちに待ったキャンプ場の開園が延びてしまいましたが、地域に役立つ活動をしようと、先に農業をやっていた隊員が始めたドライブスルー八百屋を手伝い始めました。

日々行っていた情報発信にインパクトを持たせたいと、黒保根支所にお願いしてドローンも導入しました。ドローンで空撮すると、赤城山麓の深い森の中のキャンプ場ということがよくわかり、迫力ある映像が撮れます。桜の時期の絶景とか、開園を待ちながらとにかく撮影して動画で発信し続けましたね。
宣言明けの6月に開園してからは、お客さんと一緒に泊まって生の声を聞いたり、お礼に撮影した動画や地元の木材で作ったスウェーデントーチをプレゼントしたりしました。「こんなすごいもの、きれいなものをキャンプ場でもらった」というのを、お客さんが拡散してくださるのが一番の宣伝効果になりますから。
いろいろなイベントも企画しました。昨年の紅葉の時期には「里山クリーンハイク赤城山」と名付けて、清掃登山とピラティスと、たき火を組み合わせたイベントを行い、その様子を動画で発信しました。高尾山などでも行われている清掃登山ですが、それにトレーニングやキャンプを組み合わせてユニークなイベントになりましたよ。

中級・上級のキャンパーには冬キャンプをやりたいという要望が多いので、こんなふうにすればできるという実証実験も行ってみました。市営なので、まだまだクリアすべき課題は多いのですが、まずはイベントとして実現できればと思っています。

 

Q:オンラインサロンで仲間集めも行われているとか?

A:はい。利平茶屋のテントサイトは、今5張りしか張れなくて、予約がすぐに埋まってしまいます。そこで、大雨で使えなくなったテントサイトを復活させて張れる数を増やそうと、オンラインサロンでボランティアを集めて整備することを考えました。

SNSやZOOMを使って話し合いながら進めています。テントサイトを直すリノベーションチームとイベントの企画運営チーム、合わせて約20名、2つのチームでスタートしています。

今年の夏はサロンのメンバーがスタッフになり、小学生向けの夏休みイベントを企画しました。コロナ禍で地元の子どもたちがなかなか出かけられない中、地元の素晴らしい場所を知ってもらって郷土愛を育んでもらおうと、市内の全小学生にチラシを配って開催したところ、大勢の参加がありました。虫を集めるライトトラップは子どもたちに大人気でしたし、苔テラリウムづくりには大人の申し込みもたくさんありました。

 

Q:残りの期間や任期終了後は、どのように活動していく予定ですか。

A:地域に受け入れていただければ、このまま定住したいと思っています。そのために、今年2月に黒保根地区の隊員3人で、一般社団法人「KiKi」を立ち上げました。KiKiは共存共栄の頭文字。3人で知恵を絞り、お互いの活動に関わりながら、経験値を3倍にして効率よく活動しています。一緒にマルシェを開いたり、キャンプ場のイベントにも企画段階から関わってもらったりしています。一般社団法人になったことで「何を始めるつもりだ」と不審がられることもありますが、それをきっかけに地域の人と話して理解していただく機会にもなっています。

Q:地域おこし協力隊を目指したいという人にメッセージをお願いします。

A:大変なことも多いけど、それを上回るほど楽しい毎日です。都会では得られない豊かさを感じる日々ですね。水や野菜がとにかくおいしくて、食生活がよくなったので、なんと健康的に30kgもやせたんですよ。

実は、僕はキャンプ場の管理人の仕事をしたいと思って応募したのですが、着任してみたら情報発信の活動でした。僕の場合はそこから気持ちを切り替えて、今できることは何だろうと前向きになれたからよかったけれど、求められていることと自分のやりたいことが合っているか、事前にちゃんと確認しておくことは絶対必要だと思います。

(取材日:2021/10/14)