隊員&OB・OGインタビュー

地元の人にとっては日常的な嬬恋村の魅力を発信していきたい。

嬬恋村 三ツ野元貴さん OB(2016年4月~2019年3月)

Q:地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。

A:大学でまちづくりを学んだことから、卒業後はデベロッパーに就職して、ショッピングセンター内に誘致する店舗の企画などを担当していました。ただ、グローバル化する業界に原点に立ち返って、もっと地域に関われる仕事がしたいと転職を決意しました。

自分の思いを実現できる仕事を探す中で、地域おこし協力隊という制度を知り、「これだ!」と思いました。いくつかの候補地を見つけて見学にも行きました。その中で嬬恋村を選んだのは、地元の神奈川県三浦市もキャベツの特産地なので、日本一のキャベツ産地でキャベツを通じたまちづくりを実践したいと思ったからですね。


Q:隊員だったときの活動内容を教えてください。

A:着任した日が新たな観光案内所のオープンの日でした。当時はまだ任意団体で、スタッフ3人のうち協力隊員は僕一人でした。業務は、役場からの情報を各施設に流したり、観光客を施設に案内したりといった窓口業務だけを担っていました。
そこで、もっとお客様との接点を増やしたいと、ホームページを一新したり、各種SNSのアカウントを立ち上げて毎日1回発信したりする活動を始めました。ホームページの作成は、現地に足を運んで情報を集めるなど苦労もありましたが、日本フォトツーリズム協会が主催する「フォトジェニックサイト・アワード」で全国ベスト100に選出されたことはうれしかったですね。
イベント関係では、村が「妻との時間を作る旅」というテーマで観光に力を入れているので、従来の「キャベツマラソン」に夫婦ランの部を作りました。夫婦で一緒に走って、手をつないでゴールするという企画です。また、宿泊施設の夫婦向けプランも企画しました。
活動を進める中で、観光協会が法人格を持っていないと国や県の補助事業にもエントリーできず、活動に制限が出てしまうことがわかり、法人化にも取り組みました。僕はもちろん、周りにも法人を立ち上げた経験のある人がいなかったので、ゼロから調べ、各方面にアドバイスしていただきながら、本来1年かかるところを半年未満で一般社団法人を立ち上げることができました。大変でしたが、そのおかげでスタッフの結束力が高まり、今後いろいろなことに挑戦していこうという気持ちを共有できたと思います。

そういうわけで、僕にとって隊員時代の3年間は、やりたいことを実現するための準備期間となりましたね。


Q:現在の活動内容を教えてください。

A:着任当初は、嬬恋村で実力をつけて任期終了後に地元の三浦市に戻ることを考えていたのですが、村のポテンシャルに気づき、その魅力にひかれて残ることを決めました。
現在は、(一社)嬬恋村観光協会の事務局長を務めています。現在、スタッフは8人になりましたが、そのうち4人が現役隊員(うち1人は産休中)で、新しい隊員の募集にも関わる立場になりました。積極的にコミュニケーションを取り、先輩として彼らの相談に乗ったりアドバイスしたりするのも僕の役割です。

最近は、コロナ禍で飲食店が疲弊していることから、動画が得意な隊員とともに村内の飲食店の取組を紹介するケーブルテレビCMを作成し、喜んでいただけました。
今後の活動としては、住民にとっては当たり前の景色が実はすごい絶景だということに住民が気付いていないことが多く、情報発信の面で手つかずのところが多々あると感じています。僕たちのように外から来た人間だからこそ気づく村の魅力を、どんどん発掘していきたいですね。そういう面では、協力隊員が活躍しやすい場所だと思います。


Q:具体的な目標があれば教えてください。

A:法人化や旅行業者登録により旅行を主催できる団体になったので、大手の旅行業者には作れない地元密着型の旅行プランをぜひ企画したいです。
それから、地元三浦市と嬬恋村がキャベツで交流を深められるような取組も考えています。収穫時期がずれるため、お互いにキャベツを送り合ったり、産地ならではのメニューを考えたりと、ウィン・ウィンの関係が築けるのではないかと思います。

現役隊員だけでなくOBともつながりを築き、村はもちろん県全体の観光を盛り上げていきたいですね。それを実現するために、自分がやりたいことを箇条書きしたリストをつくり、他のスタッフとも共有しています。


Q:嬬恋村での暮らしはいかがですか?

A:休みの日は、山に登ったり、スキーに行ったり、温泉に行ったりしています。日常が旅行みたいな感じですね。ときには東京から友人を呼び、宿泊施設に泊まることもありますよ。

もちろん、初めの頃は不便さを感じることもありました。車がないと買い物に行くのも不便だし、都会のように遅い時間に気軽に飲みに出かけることもできません。寒さにも慣れていなかったので、最初の冬は厳しかったです。でも、住めば都で、近所の方たちと交流できたりすることがプラスになりました。今は、毎日が楽しいです。

 

Q:地域おこし協力隊を目指したいという人へのメッセージがあれば。

A:都会で就職したら、大きな企業・大きな事業の中で自分を表現することは難しいかもしれませんが、地域おこし協力隊ならコミュニティが狭い分、いろいろな人とコミュニケーションを取りながら自分を表現することも可能です。自分の思いを具現化できることにやりがいを感じる人には、協力隊はお勧めだと思います。

(取材日:2021/8/18)