隊員&OB・OGインタビュー

Uターンで新しい分野にチャレンジ。思ってもいなかった道が開けた。

嬬恋村 大井志依さん OG(2016年8月~2019年3月)

Q:嬬恋村の地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。

大井志依さん

A:実は、私は嬬恋村出身で、Uターンで戻ってきたんです。その前は千葉で大学の事務の仕事をしていましたが、主人の仕事の関係で嬬恋村に戻ることが決まり、私の仕事をどうしようかと思っているときに、嬬恋村で隊員を募集していることを知りました。

ただ、観光関係などの募集はもう終わっていて、たまたま福祉分野の枠だけが残っていたんです。福祉関係には今まで全く関わっていなかったので、自分にできるだろうかと最初は不安でしたね。

 

 

Q:隊員だったときの活動内容を教えてください。

大井志依さん

A:地域包括支援センターに配属され、高齢者の健康寿命を延ばす「フレイル予防」という活動に取り組みました。国や県でもフレイル予防のインストラクター養成に取り組み始めていますが、嬬恋村は先駆的に取り組むことになって、私もその活動に参加することになったんです。全10回の養成講座を受けて、約15名のフレイル予防サポーターの一人として活動を始めました。通称「フレパル」と呼んでいるサポーターは、現在30名くらいに増えていますよ。

各地区を巡って健康づくり教室を開く活動です。軽い体操をしたり、ゲームをしたり、高齢者が偏りがちになる栄養の話なども行います。「話を聞いてタンパク質を摂ったら元気になったよ」とか「すごくためになった」と言われるとやりがいがあります。

フレパルの活動に加えて、高齢者の居場所づくりにも取り組みました。昔は普通にあったご近所同士でお茶飲みしたりする場所がなくなって、高齢者が引きこもりがちになるのを防ぐために、外出できる場所づくりです。「本当に楽しい、この場所があってよかった」という声をたくさんいただきました。そんな風に任期中の3年間は、ボランティアや地域の人たちと一緒に活動しました。

 

Q:隊員時代の思い出や、よかったことは?

A:地元なので、どこに行っても溶け込むのは難しくありませんでした。むしろ村に縁の無かった隊員たちの、村のよさを発見しようとするパワーには正直驚きました。皆さん情報量がすごくて、村を新しい視点で見てくれるんです。私は元々知っている場所という甘えがあったかもしれません。

大井志依さん

よかったのは、比較的時間に融通が利いて自分の時間が取りやすかったこと。その間に資格も取得できました。1年目に「健康運動実践者」、2年目には「健康運動指導士」を取得しました。私は体育大学を卒業していたのですが、体育大学を出ていることや教員免許を持っていることが資格取得の条件にあったんです。私が大学を卒業した時は就職氷河期で、自分のやりたいこと、やれることを就職に生かせませんでしたが、体育大学を卒業してよかったとその時初めて思いました(笑)。

嬬恋村には「健康運動指導士」がいなくて、よそから来てもらっているのですが、その方が都合で来られなくなり、私に声が掛かったということもありました。

 

Q:終了後は社会福祉協議会に就職されたんですね。

みんなの水曜食堂

A:国の制度として各市町村に必ず一人は「生活支援コーディネーター」を配置することが決まって、その事業を社会福祉協議会で行うことになりました。住民同士の助け合いや話し合いの場をつくる活動で、私は隊員のときからやっていたので、タイミングよく就職できたんです。

今は、フレイル予防など隊員の頃から続けている活動の他に、共生型の居場所づくりとして「こども食堂」を始めました。「みんなの水曜食堂」と名付けて、水曜日の夕方から営業しています。6月にオープンしましたが、おかげさまで大盛況。お子さんたちのクチコミで広がって、スペースが足りないくらいです。共生型なので、障害者でも高齢者でも歓迎なのですが、今はお子さんがメインですね。お料理はご近所の方たちがシフト制で、毎回3名くらいずつボランティアで手伝ってくれています。ボランティアさんの力を借りて、順調にスタートできたと思います。

村内に小学校は2校あるので、ゆくゆくはもう1か所でも開設したいとも思っています。

 

Q:これからの目標は?

A:まず、社会福祉協議会の仕事に慣れることですね。生活支援コーディネーターとしての仕事自体が、いろいろな業務の合間になってしまうので、もう少し地域に出ていきたいと思っています。

また、せっかく隊員を経験して、福祉以外の人たちとの縁もできたので、農業とか観光とかいろんな分野の人たちとつながりながら、福祉も盛り上げていけたらいいなと思っています。

 

Q:地域おこし協力隊を目指したいという人へのメッセージがあれば。

大井志依さん

A:やりたいことがわからない、やりたいことが見つからないというときに、地域おこし協力隊という制度は一つの選択肢だと思います。

私自身、福祉は新たな分野への挑戦でしたが、思ってもいなかったところに道が開け、新たな自分を再発見できました。任期中の3年間は失敗してもいい期間です。やりたいことを掘り起こすこともできるし、たとえ見つからなくても光が見えてくるかもしれません。それと、Uターンで地元に戻ってきたいという人にもお勧めします。戻りたいけれど就職先がないと思うかもしれませんが、意外と職はあります。制度を生かして地元に戻ってくるという手もあると思いますね。