隊員&OB・OGインタビュー

キャッチフレーズは “Local(ローカル)をVitalization(バイタライゼーション)する力を!”

下仁田町 小池準さん OB(2015年4月~2018年3月)

Q:隊員だったときの活動内容を教えてください。

至高のすき焼き

A:1年目はジオパーク推進マネージャーを担当しました。ジオパークについての知識は全くなかったので初めは不安でしたが、学術的なことより一般の人にもわかりやすく紹介するために、山の資源を活かしたアウトドア活動をやることにしました。

なかでも、ナイフ一つで道具を作ったり火をおこしたりするブッシュクラフトに興味があって。群馬県のアドバイザー派遣事業を利用して、ジャパンブッシュクラフトスクールの川口拓先生に来ていただき、レクチャーを受けることができました。

2年目からは観光課で、観光イベントなどを中心に活動しました。活動中に吉本興業のマネージャーさんと知り合って、沖縄国際映画祭に動画を出品しないかというお話をいただきました。シナリオなんて書いたこともありませんでしたが、「至高のすき焼き」という30秒のCM動画制作に挑戦しました。町内だけですき焼きの具材がそろうというストーリーです。5万円という低予算での制作でしたが、全国の市町村から出品された中で、なんとグランプリを獲得できたんですよ。その経験が、今行っている動画制作の基礎にもなっています。

もともと就職より起業を目指していたので、3年目には観光課の業務を務めながら、さまざまな研修に参加させてもらうなど起業に向けての準備を進めました。

Q:隊員時代、大変だったことはありましたか。

A:僕は下仁田町の第1期として採用されたので、役場でも初めての受け入れでどう扱っていいかとまどったようです。

僕も行政で働くのは初めてだったので、決裁板を回さなくてはならないこととか、予算の使い方だったりとか、出勤もタイムカードできっちり管理されたりとか、とにかく民間とは全く違うのでカルチャーショックが大きかったですね。慣れるまでに1年くらいかかりました。でも、行政との関係性が築けたし、普通の仕事では得られないような人脈もできたので、任期終了後の今の仕事にとても役立っていますよ。

Q:終了後はNPO法人を立ち上げて起業されたんですね。

小池準さん
蜂の駆除
ダムセイバー

A:はい。当初は全国区地域おこし別働隊という名称で隊員のサポートを行う組織を考えていましたが、他の事業もやりたいので群馬県から地域おこしを行う人という意味(Local(地域)Vitalization(活性化;おこし)Cooperator 協力者)で、Gunma.LVc」というNPO法人を立ち上げました。

事業内容は、まずアウトドアイベントの開催。アウトドアの会社などから依頼を受けて、子どもたちに、自然学習と防災教育を融合したブッシュクラフトを教えています。防災教育にもつながるアウトドア活動ですね。山だけでなく、都市部でも大きな災害があったときのライフラインの確保にも役立ちます。ろ過装置を作って飲み水を確保したり、火打石で火をおこしたり、薬草で軟膏をつくったり、命を守るための優先順位も教えます。隊員1年目から始めた活動ですが、今ではジャパンブッシュクラフトスクールのインストラクターも務めているんですよ。県内ではまだ、あまりメジャーではありませんが、全国的には流行り始めているので、そのうちブームがくるんじゃないかと期待しています。

それから、「地域支援yaoyorozu」という便利屋事業もやっています。いろんな困りごとに対応しますが、夏場は草刈りや蜂の駆除とかが多いですね。隊員時代のつながりがあるので役場からの依頼もいただけるのはありがたいです。先日は、妙義山の第四石門にできた巨大な蜂の巣の駆除の依頼を受けました。民家にできた蜂の巣は、申請を出せば駆除の補助金が出るんですが、お年寄りなど知らない人が多いので申請書類の代行も行っています。

プロジェクト組織を組んでの事業もいろいろやっています。例えば、竹害を利用した「かぐやプロジェクト」。竹が生え過ぎて困っているところから竹を伐採して整備する代わりに、伐った竹をいただいて商品などに加工する。竹灯篭づくりを行っている前橋市の地域おこし協力隊と高崎経済大学の学生さん、アウトドアメーカーの社長さんと組んだプロジェクトです。赤城南面千本桜のイベントに竹のモニュメントを作ったりしました。

また、埼玉県神川町の地域おこし協力隊OBの人と一緒に「鬼神戦隊ダムセイバー」というプロジェクトにも、プロデューサー兼スーツアクターとして携わっています。埼玉との県境にある下久保ダムが心霊スポットということで、夜中に肝試しをしたり騒いだりする若者が多くて近隣迷惑になっている。そこで、夜中に人が来ると「ウォーターファンタジア」というダムセイバーのテーマ曲を流し、肝試しを台無しにするという企画です。面白い企画だということで、日本テレビやテレビ埼玉の番組、群馬テレビの番組でも取り上げてもらったんですよ。

今は、ダムセイバーのショーイベントとドラマ作品も作ろうと、シナリオを書いているところです。隊員時代にCM動画を制作した経験も役立っていますね。制作費はクラウドファンディングを利用する予定です。

Q:地域おこし協力隊のサポート事業にも取り組んでいるのですか?

A:地域おこしに関する活動の協力とプロデュースやコンサルティングですね。アドバイザーとして依頼されて、自分の経験とか全国的な指針とかをアドバイスしています。

隊員OBOGを集めての事業もやりたいんです。他県では、OBOGのコミュニティーができているところもありますが、群馬県内にはまだありません。

今、ウォークオンプロジェクトという企画を準備中です。いきなりメールで一斉送信しても手ごたえはないと思うので、自分の足で歩いて一人ひとりと対話しながら形作っていこうと。立派な実績がないとアドバイザーなんてできないと思っている人が多いけれど、活動の中で苦労したこととか成功体験とかを掘り下げて話すだけで、現役の隊員たちにはリアルな未来の指針になると思うんです。

Q:今後の目標を教えてください。

小池準さん

A:LVcは地域おこし協力隊の略語でもありますが、“Local(ローカル)をVitalization(バイタライゼーション)する力Chikaraを!”というのがキャッチフレーズです。

今はまだ人を雇えるほど利益を生んでいませんが、今後はもっと知名度を上げて、人を雇えるレベルまで規模を大きくするのが目標です。雇用を増やすことが地域にとっての貢献になると思いますから。

3年間の隊員活動で経験したことや知り合った人たちとのつながりを大事にしながら、群馬県全体を視野に、地域おこしに関連した「面白いこと」をやっていこうと。

ある人に「仕事は大人が全力でやる遊びだ」という言葉を教わりました。嫌々やる仕事より全力でやる遊びの方がクオリティーが高い。だから、自分が楽しいと思うことをこれからも全力でやっていこうと思っています。