移住から定住へ。地域の人へ恩返しをしていきたい。

Q:地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。

A:私は大学時代、スキーサークルに所属していました。サークルの先輩に誘ってもらったことをきっかけに、片品村のスキー場でアルバイトも経験しました。スキー場でのアルバイトを通して仲良くなった方が沼田市に住んでいて、遊びに行くうちに「なんとなく沼田が好きだな」と感じるようになりました。ただ、その時点では、ここに住むという選択肢までは考えていませんでした。
そんなとき、沼田市の広報誌に地域おこし協力隊の募集が載っていると教えてもらいました。「なんだか面白そうだな」という、かなり直感的な理由で応募したのがきっかけです。正直、北海道や青森など、もっと遠い場所だったら二の足を踏んでいたと思います。でも沼田は、何かあればすぐに帰れる距離ですし、何度か訪れていたこともあり、「なんとなく生活はできそうだな」というイメージも持てていたので、自分の中でストッパーになるものはありませんでした。私は東京都出身で、もともと実家を出たいという気持ちもあり、その点でも協力隊という制度は自分に合っていました。自治体によって制度は異なりますが、私の場合は、家賃補助があったのも魅力的でした。
Q:活動内容について教えてください。

A:移住促進を担当しています。移住相談会での対応や、トライアルハウスの利用を希望される方との事前面談、滞在中のヒアリングなどが主な業務です。まだ沼田に来て3年弱で、知識が足りないところもあるため、移住相談の際は市職員の皆さんや4名の「移住コンシェルジュ」の方々と一緒に対応することが多いです。対応中は、相談者がどのような情報を必要としているのかを、会話の中で丁寧にキャッチするよう心がけています。お子様がいる方であれば子育て関係の情報を提示するようにし、移住して起業したいという方とは、人生相談のような話をすることもあります。
移住を検討されている方の夢や希望に対して、市職員の方や移住コンシェルジュの方と力を合わせて、沼田の地で夢を叶えられるよう全力でサポートしています。
Q:活動の中で嬉しかったこと、大変だったことを教えてください。

A:やはり一番うれしいのは、自分が担当した方が実際に沼田市へ移住してくれたときです。移住後も連絡をくれる方がいると、この仕事をしていて本当によかったなと感じます。一方で大変なのは、言葉の伝え方です。移住相談に来られる方は、20代からご高齢の方までいらっしゃいます。同じ内容でも相手によって伝わり方が違うので、「同じ意味をどう伝えるか」を今でも悩みながら向き合っています。また、移住相談は営業に近い側面もあると思っていますが、どこまで営業のスタンスを出すべきかが難しいところです。あまり貪欲すぎても引かれてしまいますし、逆に何もしないとやる気がないと思われてしまう。機械的に進めるのも違うと思うので、程よい熱意と、相談者に寄り添う気持ちを大切に接しています。
Q:沼田市での暮らしはどうですか。
A:スキーがいつでもできる環境というのは、うれしいです。東京にいた頃のように計画を立てて出かける必要がなくなり、思い立ったら行ける距離感が心地よいと感じています。また、地域行事が盛んなことも魅力です。春と秋の例大祭、子ども相撲、もちつき、夏のレクリエーション、沼田まつりなど、イベントが充実しています。その多くは育成会が主体で行っており、私も入会しました。地域行事に顔を出していると、少しずつ自分の顔と名前を覚えてくれる人が増え、知り合いの輪が広がりました。意外かもしれませんが、大人が移住をして苦労することは、移住先で友達をつくることだと思います。移住先で就業する方は職場で知り合いもできると思いますが、最近はテレワークの方も多いです。まずは、挨拶と雑談からでも地域の方と交流を持って生活することが田舎らしさであって、暮らしを豊かにすることだと思います。
Q:これからの目標を教えてください。

A:協力隊の任期終了後は、市内の会社に就職することが決まっています。協力隊の活動を通じて知り合った方に、自分から「ここで働かせてください」とアプローチしました。良い返事をいただいたときは、本当にうれしかったです。
今後、数年で沼田を離れることは考えていません。地域の皆さんが温かく迎え入れてくださり、知り合いもできてきたので、これからも10年、20年とこの地域で暮らしていけたらと思っています。今の私は地域の方々に何かと助けられている立場なので、これからは自分が地域に返していける存在になりたい。困ったときに「私が行きますよ」と言えるような関係性を築いていくことが目標です。
Q:これから隊員を目指そうと思っている人に向けて、アドバイスをお願いします。
A:地域おこし協力隊の活動は、やり方次第で大きく広がります。その土台となるのは、まず自分が地域に歩み寄り、人間関係を築くことです。いきなり変化を起こそうとするのではなく、日々の対話を重ね、名前と顔を覚えてもらうことが信頼への第一歩になります。飲み会であれコーヒーであれ、形式よりも「話す時間を増やすこと」が大切だと思います。活動は地域の方々との連携なしには成り立ちません。一方的に協力を求めるのではなく、互いに支え合う関係を築く姿勢が求められます。夢や理想を持つことは大切ですが、それを急いで押し通すのではなく、まずは相手を理解し、その上で自分を知ってもらうこと。そうして信頼を積み重ねることで、無理のない協力関係が生まれ、活動も自然と実りあるものになっていくと思っています。
(取材日:2025/12/2)