「わらべ工房」の運営を主軸に資源の町の再復興へ
Q:みどり市の地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。
A:以前は都内でタレントグッズの会社を経営していたのですが、コロナ禍を機に受注がゼロになってしまいました。会社にも何か強みが欲しく、これを機に地方とか工芸とかの時代が来るだろうなとも思っていました。ただ、新たに起業することはちょっと心配ということもあり、制度を調べて地域おこし協力隊を見つけました。そこで、もともと木工に興味があったこともあり、JOINのサイトで「木工」を検索したら、偶然みどり市だけがヒットして。市に問い合わせたら、副業OKだったので、「あ、これは会社との両立も図れるな」と思って、事情を説明したら快く了承をいただき、着任しました。
Q:木工というジャンルを選択したきっかけを教えてください。
A:もともと就職していた会社でCADの技術を学んでいたり、子どものころから木が身近にある環境にいたので、木工で生計を立てたいと思うようになりました。幼いころから釣りが好きだったのも相まって思いついたのが木製のルアーです。現在、ルアーは受注生産のみになりましたが、みどり市のふるさと納税品にも出品しています。結構人気みたいです(笑)。ヒノキを使っていて全部機械で自動に削りだせるようにしています。
Q:隊員時の活動内容を教えてください。
A:「わらべ工房」で板材や木工品を販売したり、ワークショップを開催して工房を運営していました。最初は、自分発信のオリジナルブランドとして、「わたらせ木工店」を始めたのですが、コロナ禍でイベントがほとんどなく、売る場所もなかったので、早めにOEM生産という形で受託品メインに切り替えて、都内のメーカーなどに販売していました。2年目からは、少しずつイベントも増えてきたので、わらべ工房を拠点に、竹灯籠や食器づくりなどの木工ワークショップを開いて販路を広げていきました。先月もワークショップを開いたところ、工房が埋まるくらいの小学生が来てくれました。
Q:現在はどのようなことをされているんですか?
A:現在は、みどり市地域プロジェクトマネージャーとして活動をしていますが、やっていることは現役時とほとんど変わりません。わらべ工房を運営しながら、地域の素材を使ってワークショップを開いています。みどり市の協力隊がやっているワークショップは、僕が材料を集めてキット化して、そのキットを買い取ってもらっています。最近は企業のSDGs系のイベントも多いので、わらべ工房で板材を製材した端材をワークショップに利用したりしています。製材所があるのは強みですね。他にも、最近はツアー会社を立ち上げたので、今はそのオープンの準備を進めています。ただ、一人では無理なので、若くて力のある隊員にも協力してもらっている形です。土日どこかに行けば何かしらのイベントが開催されている状態を目指していて、今は、その準備段階です。わらべ工房も、せっかく地域プロジェクトマネージャーを任せてもらっているので、このままでは終わらせたくないという気持ちがありますね。
Q:みどり市で暮らしてみた感想を教えてください。
A:ほかの地域よりも配送に時間がかかったり、移動のコスト面がちょっと大変ではあります。ただ、ほかには言うことないですね。木もあって釣りもできる環境で、好きなものに囲まれて生活できている感じです。釣りが好きなので、仕事が落ち着いているときはルアーのテストも兼ねて朝昼晩と釣りをしています。地域の方も皆さん優しいので、愛嬌さえあれば何とかなると感じます(笑)。
Q:これからの目標を教えてください。
A:昔、みどり市は資源の町として栄えていたらしいので、木材を通して再復興したいなという思いはなんとなくありますね。木を使って人を呼びたいですし、今は草木ダムもあるので、そこを活用して人を呼び込みたいというのもあります。わらべ工房やカヌーツアーなど、1つの点だと弱いけれど、いろんな施設やアクティビティを用意しておけば、天候に恵まれなくてもみどり市を楽しむことができる。そういった総合管理みたいなことを目指しています。みどり市は、初めて来た時にちゃんとやれば絶対いい所になるなと思いました。わらべ工房という場所も、アクセスに優れていて、自然の中を抜けるとダムが一面に広がるんです。その景色やアクセスの良さだけで良くて、ほかの要素は付加価値でしかないんです。だから、もっと周知していけば、もっと良いところになるんじゃないかと思います。ツアー会社もありますが、やはり1番やりたいことはわらべ工房を整備して、隊員の手も借りながらどんどん大きくしていくことです。
Q:これから地域おこし協力隊を目指す人にメッセージをお願いします。
A:地域おこし協力隊って、会社で働く環境と違って自分の行動にある程度自由があるので、そういった環境に慣れちゃうと、なかなか社会に戻れない人もいると思うんです。でも、そんな環境下だからこそ、自分を律せられることが重要になってくるので、自分に厳しくしておいた方がうまくいくと思います。地域おこし協力隊は、貴重な経験になるので1分1秒を大事に過ごしてほしいです。
(取材日:2023/8/29)