隊員&OB・OGインタビュー

駅前に灯りを点し、若者がとことん楽しめる場所をつくりたいと。

中之条町 齊藤 潤一郎さん OB(2015年4月~2018年3月)

Q:地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。

A:以前は静岡市の実家で暮らしながら、飲食店の店長として働いていました。そのとき、別の飲食店で働いていた中之条町出身の妻と出会い、中之条町のことや地域おこし協力隊の募集のことを教えてもらったのがきっかけです。
当時はまだ友人関係でしたが、妻の姉がアーティスト活動を行っていて、「中之条ビエンナーレ」ディレクターの山重徹夫さんとも家族ぐるみの付き合いだとも聞きました。

地域おこし協力隊についても、アートについても、ほとんど知識はなかったのですが、生まれてからずっと静岡を離れたことがなかったので、違う土地で暮らしてみたいという気持ちがあり、応募して採用していただきました。
もちろん着任前には、少し勉強しましたよ(笑)。


Q:隊員だったときの活動内容を教えてください。

A:着任した2015年と、2年後の2017年に開催された「中之条ビエンナーレ」の運営スタッフとしての活動がメインでした。作家さんは滞在制作される方だけでなく電車で通う方もいらっしゃったので、現場への送迎や材料の運搬など日々のお手伝いを行ったり、始まったら受付を務めたりしました。

役場の嘱託職員としての採用だったので、ビエンナーレが開かれない年には、ふるさと納税の関係など役場内のさまざまな業務も経験させていただきました。いろいろなことが学べて、充実した3年間だったと思います。


Q:隊員時代に経験した、うれしかったことや大変だったことを教えてください。

A:僕の場合は、それまでずっと昼夜逆転の生活をしていたので、毎朝早起きして8時過ぎに出勤するという生活に慣れるまでが、結構大変でした。それと、作家さんの活動は不確定だったり、急な動きがあったりして、振り回されることもよくありました。精神的にも肉体的にもかなりハードだった分、ビエンナーレ最終日の達成感は格別でしたね。

規則正しい生活をして、適度に体も使ったので、健康的な日々を過ごせたと思います。
仲良くなった作家さんたちと食事に行ったり、飲みに行ったりという交流ができたのもうれしかったことの一つです。


Q:現在の事業内容を教えてください。

A:任期終了後には、また飲食店を始めたいと漠然と考えていましたが、場所は静岡に戻るか、群馬の都市部か、中之条町内か、決めかねていたんです。そんなとき、任期終了後に独立すると補助金をいただけるという町独自の制度が決め手になり、中之条町に決めました。

ここは、任期中の3年間もずっと空き物件で、夜の駅前が暗いことが気になっていたんです。内覧させていただいたら、広さも使い勝手もちょうどよくて、僕と妻ともう一人のスタッフと、3人で居酒屋を始めることにしました。
電気と水道以外はほぼ自力で、知り合いにも手伝ってもらいながら、ホームセンターで木材を買ってきたりして改装しました。大きいサイズののれんは高価なので、店名をプリントしたTシャツを並べてのれん代わりにしています。
妻が「ふるさと交流センターつむじ」に「キッチンさいとう」という店舗を開いていたので、店名は「ニューサイトウ」に決定。どの世代も入りやすい大衆酒場で、料理はなるべく地元の食材にこだわり、お酒は地元の「四万温泉エール」や貴娘酒造の「咲耶美」も提供しています。

当初は多くのお客様にご利用いただいて、かなりにぎわっていました。ただ、コロナ禍が始まって以降は柱だった宴会がなくなり、厳しい時期が続きました。先行きが見通せず、出費を減らしながらなんとか耐えてきた感じです。


Q:これからやりたいことは?

A:実は、この店を若い世代に任せてもいいかなという気持ちもあるんです。オープン当初から、中之条にこんなに若者がいたのかと驚かれるほど、若い人たちがよく利用してくれています。中之条の若者たちが、遊ぶときに高崎など都市部に行ってしまうことを残念に思っていて、町内にもっと楽しめる場所があればと思うんです。若い人に任せることで、ここがそういう場所になればいいなと思って。

その上で、僕たちは中之条と高崎・前橋などの都市部とで、二つ拠点を持って別の展開を考えたいという夢もあります。まだ構想もできていませんが。


Q:地域おこし協力隊を目指したいという人にアドバイスがあれば。

A:知らない土地に来て、地域の人に受け入れてもらったり、人脈を広げたりすることは第一の関門ですね。僕の場合は、妻の地元に着任したので、ある程度恵まれていましたが、自分からアクションを起こすことは必要だと思います。消防団に入ったり、お祭りに参加したりすることも、地域になじむ近道です。知り合いも増え、何より楽しいですから。

(取材日:2022/9/12)