隊員&OB・OGインタビュー

「緑豊かな甘楽町で森林とともに暮らしていきたい。」

甘楽町 高野憲一さん  活動3年目(2022年6月~)

Q:地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。

A:前職は、農林水産省の林野庁で定年まで働いていました。林野庁での最後の仕事が、関東森林管理局群馬森林管理署の署長で、主に、群馬県の西毛地域の森林の管理を統括していたことから、甘楽町に訪れる機会もありました。その時に当時の町長と面識を持ち、東京の団体で2年間活動した後、甘楽町の自然塾寺子屋の代表から町長を通じて、地域おこし協力隊を紹介してもらいました。
林野庁では、JICAの仕事で植林技術の普及のために途上国に行ったこともあり、森林事業と併せて、青年海外協力隊のサポートをしている自然塾寺子屋でも経験を活かしてお手伝いができると考え、応募しました。

 

Q:地域おこし協力隊での活動内容を教えてください。

A:主に森林関連の仕事と農業の2つです。森林関連事業では、令和元年から始まった森林経営管理制度に関する事務作業を行っています。制度の仕組みとしては、農業でいう耕作放棄地のように、所有者による管理が難しくなってしまった森林を、行政から林業事業体に管理を委託するというものです。森林を放置してしまうと災害の危険性が高まります。手入れをするには費用がかかるため、町が所有者の同意等を経て管理計画を立て、希望する林業事業体に実施してもらいます。あとは、甘楽町にある町有林の管理計画も行っています。
農業関連では、移住する前から甘楽町のふるさと農園を借りて野菜作りをしていましたが、移住してから本格的に畑を借りて野菜作りをしています。甘楽町は、県内でのオーガニックビレッジ宣言第一号の自治体なので、ふるさと農園で栽培をしていたときから野菜はすべて有機栽培で行っています。

 


 

 

Q:甘楽町の印象を教えてください。

A:甘楽ふるさと農園は少し高台にあり、眺めが非常に良く晴れ晴れとした気分になります。そういった意味では、甘楽町の風景やいろいろなものが自分には合っていると感じています。暮らしの面では、山間部もありますが平坦な場所もあり、高崎や富岡へのアクセスも良く、生活するうえで不便はありません。
元々転勤が多い仕事をしていたので、移住に対する抵抗はありませんでしたが、働いていくうちにどこか一つの場所に落ち着いて生活をしたいという思いが強くなっていきました。しかし、外から来た人間なので、初めは見えない壁を感じることもありました。それは当然のことであり、今後も少なからず、地域の人と外から来た人の間に壁を感じることはあると思います。ただ、前の町長さんや今の職場の方との交流やご縁を大事にしているので、職場や生活環境の範囲内では、良い関係が築けていると感じています。今後も、甘楽町で生活しようと考えているので、その関係性は丁寧に、大切にしていきたいです。

 

Q:活動の中で印象的だったことを教えてください。

A:昨年から上毛新聞が花粉症特集の記事を組んでいて、その中で、行政の立場として、高崎の烏川流域森林組合の組長と対談をした記事が紙面一面に掲載されました。それを見た前町長の茂原さんから「非常に良い記事だった。高野さんに甘楽町に来てもらってよかった」というメッセージをいただきました。元々、町長の人柄に触れて協力隊として頑張ろうという思いがあったので、個人的にはとてもうれしかったです。ちょっとしたことかもしれないですが、周りから励ましや感謝の言葉を受け取ると、元気になれますね。

 

Q:これからの目標を教えてください。

A:現在行っている有機農業を続けて、収穫物の量や質、技術が身についたら、農家として作った野菜を道の駅などで販売したいと考えています。また、町有林の管理や保全にも引き続き携わっていきたいです。山の多い甘楽町では、薪の販売も収入源の一つで、エネルギー価格が高騰した近年では、薪ストーブの需要も高まっています。木を切って森を再生することで山に住む生物たちにも良い影響があるはずですので、間接的ではありますが、森林保全に関わっていきたいと考えています。プライベートでは、元々山が好きなので、緑が豊かな甘楽町で登山を楽しめたらうれしいです。
また、協力隊とは別に、個人として自然塾寺子屋の活動もしているので、途上国へ行った経験を活かしながら、研修で甘楽町を訪れる協力隊候補生へのサポートを行っていきたいです。

 

Q:これから地域おこし協力隊を目指す人へメッセージをお願いします。

A:地域おこし協力隊という制度の中で関わるため、自分の思い通りにいかないことがあるのは当然だと思います。それを分かったうえで制度を利用することが重要です。3年という限られた期間があるため、行ってすぐに何かができるとか、やらなくちゃいけないという焦燥感もあるかもしれませんが、常に相手とのコミュニケーションをとりながら焦らずに地域に入ることが大切だと思います。何かやらなきゃいけないと焦ってしまうと、かえってあつれきが起こり、相違が生まれてしまうこともあります。マイナス思考にならないためにも、自分が外から来た人間ということをしっかりと理解したうえで、できることや頼まれたことから着実に進めていく方が長続きすると思います。

 

(取材日:2025/2/4)