谷川岳の魅力を「自分の言葉」で伝えるガイドになりたい。
Q:地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。
A:神奈川県海老名市出身です。岩手県の大学を卒業した後、東京の木材専門商社に就職。配属先の北海道札幌市で、営業として働いていました。3年目を迎えた頃、コロナ禍となり在宅での仕事が増え一人で考える時間が多くなり、転職したいと思うようになりました。
就活サイトに登録してはみたものの、就職活動とは違った形で転職する方法はないかと思っていました。たまたまのぞいた地域と移住したい人を結ぶマッチングサービス「SMOUT」で、みなかみ町のオンライン移住説明会のお知らせを見つけたんです。その時は、みなかみ町のことはまったく知らなかったのですけど、話だけでも聞いてみようと思い参加しました。町の移住担当の方と話をして、みなかみ町は自然が豊かな町であること、事業を始めたり出店したりと頑張っている移住者が多いこと、ユネスコエコパークに登録されている町であることなどを聞き、みなかみ町にひかれていきました。
オンライン説明会から2か月後の2020年12月、観光を兼ねてみなかみ町を訪れました。町の移住担当の方にいろいろな場所をアテンドしていただいて、2021年6月にオープン予定の「谷川岳インフォメーションセンター」で地域おこし協力隊を募集するという話を聞いたんです。いいなと思った町で暮らすことができ、同時に興味のある職業に就けるというのは、いいタイミングだと思いました。実は、私は小さい頃から自然が好きで、家族でビジターセンターによく行く機会があり、子どもながらにビジターセンターのような場所で働けたらいいなと思っていました。大学の時に山登りも始めていたので、谷川岳という名峰のすぐ近くで、山に係わる仕事ができるというのは魅力的でした。その場では一回考えますと札幌に戻ったのですが、年明けには、会社に退職する旨を伝え引継ぎをし、3月にみなかみ町に移住してきました。
Q:活動内容について教えてください。
A:谷川岳登山や自然散策の拠点となる「谷川岳インフォメーションセンター」の運営管理のほか、谷川岳エコツーリズム推進協議会のインタープリター養成講座の実施なども行っています。協力隊として着任してから「谷川岳インフォメーションセンター」のオープン準備を行いました。館内の展示物はできあがっていたのですけど、お客様を迎えるにあたって必要なものは何かを話し合って作っていきました。入口のショップに並ぶオリジナルグッズ販売は、もう一人の隊員と一緒に始めたものです。もともと物販はやる予定がなかったようなのですが、「こんなものがあったら、楽しい」と私たちが提案したものの一つです。SNSでグッズを紹介しているのですが、それを見たというお客さんが来場してくれたり、オリジナルグッズは好評を得ています。
夏休みになると、子どもたちがたくさんセンターにやって来ます。子どもたちに楽しんでもらえたらと始めたのが、クイズに正解すると、ガチャガチャを回して景品がもらえるというものです。このガチャガチャも、館内の壁を飾るディスプレイも私たちが手作りしました。
Q:みなかみ町での暮らしはどうですか?
A:人との距離感がちょうどいいと感じています。みなかみ町は移住者が増えている地域なので、最初は移住者同士でつながって、移住者がつながっている地域の人とつながってと一気に人脈が広がりました。加えて、職場でガイドさんとつながって、そこから地域の人とのつながりが増えていって、移住してきてから孤立を感じたことは一度もありません。だからといって、うっとうしいと感じてしまうほどの距離感ではない。私にはちょうどいい感じです。
今、職場である谷川岳インフォメーションセンターから車で30分ぐらいの場所に住んでいます。雪深いセンター周辺は、除雪が冬のメイン仕事になるので、自宅は除雪の必要のないエリアにしました。30分の車通勤は毎日の楽しみになっています。冬から春になる瞬間や、緑がどんどん濃くなっていく春から夏、紅葉の秋と、季節の移り変わりがはっきりしていて美しい。季節と自然を日々感じながら暮らしています。
Q:任期終了後は、どのように活動していく予定ですか?
A:任期終了後も、谷川岳インフォメーションセンターの勤務を継続していきます。協力隊の任期が終わったら、卒業しなければならないというところもある中で、ありがたいことだと思っています。センターの仕事を通して、みなかみ町山岳ガイド協会所属のガイドさんと交流する機会が多くあります。ガイドさんの仕事ぶりを見ていて、自分の知識やスキルでお客様を楽しませられるガイドの仕事に興味を持ちました。勉強をして経験を積んで、センターの仕事と並行して、ガイドの仕事もやっていけたらと思っています。
Q:これから隊員を目指そうと思っている人へメッセージをお願いします。
A:自分がやりたいことと、自治体や所属する団体が求めていることがマッチングしているかどうかが大事だと思います。私は移住前に協力隊の仕事内容を聞き、面白そうと思ったので、うまくマッチングしたのだと思います。いくらやりたいことがあっても、自治体や所属する団体がそれを求めていなかったら、継続するのはなかなか難しいことです。そこを見極めてほしいと思います。
(取材日:2023/11/15)