“自然と仲良くなるためのお手伝いができたらいいな”という気持ちで。
Q:長野原町の地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。
A:さいたま市出身で、大学の農学部森林科で森林環境などを学び、卒論の研究テーマは野鳥の生態に関することでした。自然環境のいいところで仕事をしたいと思っていたとき、知り合いに長野原町で新しくオープンする浅間北麓ビジターセンターでガイドを募集していると教えてもらったのがきっかけです。それが地域おこし協力隊の活動ということでした。 自然環境抜群のジオパークの中で働けるなら最高だ、と思って応募しました。
Q:実際の活動内容について教えてください。
A:着任して1年半。スタッフは3人とも協力隊員で、3人でアイデアを出し合って活動しています。 任務はビジターセンターの運営です。自然遊歩道を通してお客様に魅力を伝えることが第一なので、遊歩道の整備が大きなウエイトを占めています。珍しい高山植物を見つけたら、お客様が観察しやすいように環境を整えたり、今、観察できるものを紹介する配布物を作成したり。館内の展示も、移り変わる遊歩道の自然と連動させています。 私は絵を描くのが好きなので、遊歩道内でその時期に見られる鳥や小動物などを、館内のホワイトボードに描いて施設に来場される方にお知らせしています。お子さん向けには、いろいろな鳥や蝶などの塗り絵を用意して、楽しみながら知識を深めてもらえるように工夫しました。 双眼鏡を持ってバードウォッチングガイドをすることもあります。野鳥の会の方など鳥に詳しい方もたくさん来場されるので、日々観察したり、知識を深めたりすることは欠かせません。知識がないとお客様に説明できないので、日々学ぶことを大切にしています。
お客様に気軽に来ていただけるように、営業期間中は何回でも利用できるシーズンパスを導入したところ、ほとんど毎週のように来てくださる方もいらっしゃり、大変うれしいです。 ここは、ジオパークのことも自然環境のことも学べる、ポテンシャルの高い施設です。いろいろな人に来ていただき、“自然と仲良くなるためのお手伝いができたらいいな”という気持ちで日々活動しています。
Q:長野原町で暮らしてみての感想を教えてください。
A:着任前には長野原という町名も知らなかったのですが、採用が決まって足を運ぶうちに、山の美しさ、景色の雄大さに魅了され、素敵なところだと実感しました。 住まいは北軽井沢地区です。近所の人たちが温かく迎えてくださり、近くにコンビニエンスストアや野菜の直売所もあるので、生活上の不安は感じていません。寒さも苦手ではないので、むしろ雪がたくさん降るとうれしいです。ただ、着任するまでほぼペーパードライバーだったので、冬の運転は正直怖いですね。通勤には車が必須なので、そこが唯一悩ましいくらいです。 浅間山をはじめとする周辺の山々へ登山にいくこともあります。この土地のことを知らずに着任したので、すべてが一年生。まずは、この土地の歴史や環境など、住んでいる人たちが大切にしていることを知ろうと思いました。自転車で行ける範囲でも大自然を堪能できるので、バードウォッチングしたり、植物や昆虫、史跡などを写真に撮って調べたりしています。 この施設が町の中心部から離れているので、地元とのつながりが希薄になりがちですが、ジオパーク関係の人や地元の学校の先生や生徒さん、ボランティアのサポーターさんなどとのつながりができ、いい関係ができてきたなと感じています。
Q:今後は、どのように活動していく予定ですか?
A:12月より施設は冬季休館に入るのですが、前シーズンにスノーシューのイベントを実施してみて、その魅力に気づきました。歩きながら冬の山々の絶景が見られるんです。今度の冬も、お客様に浅間山の冬を楽しんでいただける企画を行いたいと思っています。 活動はやりがいもあり大好きなのですが、任期が限られているので、一日一日を大切に活動していきたいです。残りの期間は、なるべく資料を残して次期の隊員に活用していただけるよう、何をどれだけ残せるかということに専念しようと思っています。 任期終了後も、長野原町で自然と関われる仕事をするのが夢です。
Q:これから隊員を目指そうと思っている人へのメッセージをお願いします。
A:初めは、わからないことも多く、自分が思い描いていたこととのギャップがどうしてもあると思います。でも、1年目、2年目と過ごすうちに、人とのつながりや土地勘もでき、その土地ならではの良さや魅力に気が付くことができると思います。何かしようと思ったとき、環境が整ってからの方がやりやすいので、1年目は焦らず、あきらめず、まずは季節を全部過ごしてみることが大事だと私は思います。
(取材日:2022/10/6)