“梅とともに生きる”をテーマに、これからも挑戦していきたい。
Q:安中市の地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。
A:以前は広告代理店で営業職として働いたり、国立の青少年教育施設で企業研修や野外活動のサポートを行ったりしていました。
直近は、前橋で農家の方々と立ち上げたNPO法人の事務局長を務めた後、秋間梅林でも農泊事業の事務局員として働いていました。実は、私の双子の姉が7年前に秋間の梅農家として新規就農していたこともあり、2年間の期間限定で雇っていただいたのです。
2年間の活動を通して、人手不足で困っている秋間梅林の力になりたいという思いが強くなり、協力隊の制度を活用しようと思ったのがきっかけです。ちょうど前任の隊員の任期が終了するタイミングで新規隊員の募集があり、応募して秋間梅林への熱い思いを伝え、採用していただきました。
Q:実際の活動内容について教えてください。
A:着任後、最初の1年間は農家で梅の栽培方法を学ぶ期間と設定しました。
秋間梅林観光協会で耕作放棄地となっている梅畑を借りてくださって、同期の田村隊員と二人で9つの畑、合計12アールを担当しています。収穫はもちろん枝切りや草刈りなど、農家の方の指導を受けながら1年間のサイクルがやっと経験できたところです。梅は古い枝を切らないと新たな枝が出ないため、花も付きません。担当した畑は長く放置されていたので、ひたすら枝切りする必要があり、暇な時期はありませんでした。
梅林にお客様を迎えるのは2、3月の花のシーズンだけ。そこで、花の時期以外にも、秋間のおいしい梅を知ってもらおうと、機会を見つけてイベント出店も積極的に行っています。協会の土取会長のキッチンカーで、物販以外にも梅を使った軽食やドリンクを提供しています。また、イベントの際にPRしようと、梅の葉をはさんだしおりも作っています。
渋川市でこけしづくりをしている隊員に梅の木を見てもらったり、桐生市のイベントに参加させていただいたりしたこともありました。コラボできそうなところとは、今後も積極的に交流していきたいです。
また、SNSでの発信にも努めています。最近は客層が若返り、SNSを多くの方が見てくださっていることを実感します。梅の花には和装がよく似合うので、花の時期にコスプレのフォトコンテストなどもやってみたいですね。
Q:活動中、大変だと思ったことや、うれしかったことがあれば。
A:大変だったのは天候の影響です。今年は開花の時期に雨が続いて不作だった上、収穫直前にひょう害があり、大きな損害が発生しました。秋間の被害は比較的少なかったのですが、隣の榛名梅林はほぼ壊滅といってもいいくらいだったんですよ。
うれしかったことは、人の輪がずいぶん広がったことです。
今年1月に「第5回全国ウメ生産者女性サミット2022 in あんなか」を開催しました。コロナ禍でオンライン開催でしたが、私は運営側として司会も務め、全国の梅農家の方々と交流できました。パネルディスカッションでは榛名や箕郷の梅農家の皆さんにも登壇していただき、それを機に群馬の梅農家の横のつながりも生まれました。ひょう害の際にもすぐに連絡を取り合って協力することができました。
また、県内の梅加工業者5社でつくられた「うめのわ」という団体の方々ともディスカッションしたところ、生産者と加工会社の思いがすれ違っていたことがわかり、それも大きな収穫でした。
Q:残りの期間や任期終了後にやりたいことは?
A:ひょう害を経験して、露地栽培は自然災害に弱いことを痛感しました。そこで今、ビジネススクールにも通いながら、梅を育てる新しい形を考案中です。自然災害を防ぎ、温度と湿度をある程度一定にして、雨が続いても受粉できるように、ハウス栽培ができないかと思って。ハウスで早生の梅ができれば、付加価値が付けられるし、完全無農薬もできるかもしれません。まだ夢の段階ですけれど、協力隊の期間に実験的にやってみたいなと思っています。
それから、生梅の出荷だけじゃなく、市内にみんなで使える加工場を作ってラインナップを増やしたいと思っています。ジュース、シロップ、梅の粉末など、さまざまな加工品を作って、飲食店にも食材として納入したい。安中の飲食店ではどこでも秋間の梅を使ったメニューを提供しているというようになるのが夢です。市外にも営業して広げれば、可能性は一気に広がると思います。
今後も“梅と生きる”をテーマに、人の輪を広げていろんなことに挑戦していきたいと思っています。
Q:これから隊員を目指そうと思っている人へのメッセージをお願いします。
A:群馬県内にはたくさんの協力隊が活動しています。住む場所、活動内容など不安で踏み出せないこともあると思いますが、そんな時、まずは自分のやりたいこと、興味があることを、ぜひ現役隊員や協力隊OB・OGに相談しに来てもらえたらうれしいと思っています。活動する場所は違っていても仲間なので、みんなで群馬を盛り上げていけたら……、そんな仲間が1人でも増えたらうれしいです。
(取材日:2022/9/29)