隊員&OB・OGインタビュー

伝統野菜の栽培技術を身に付け、農業での自立を目指す。

下仁田町 澤 祐介さん 活動1年目(2020年12月~)

Q:下仁田町の地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。

A:出身は埼玉県の深谷市です。アパレル関係の仕事で大阪や神奈川などでも暮らし、結婚を機に前橋市に転居していました。農業の経験はなかったのですが、家庭菜園で野菜を育てるうちに本格的に農業をやってみたいという気持ちが強くなって、何か手だてはないかと探していたのです。
農業をやりたいと思っても、土地もなければ道具もない、就農に必要な貯えも特に用意していない。ただやる気だけはあるという状態でした。
そんなとき、インターネットで地域おこし協力隊の制度を知り、下仁田町で農業の協力隊員を募集していることがわかりました。

何の地盤もないところでいきなり農業を始めるのは難しいのですが、協力隊の制度を使って3年間学ばせてもらえれば、農家として自立できるのではないかと思い、応募しました。


Q:実際の活動内容について教えてください。


A:昨年の12月に着任したのですが、ちょうど下仁田ネギの収穫期だったので、初めはネギ農家さんで研修させていただきました。その後、しいたけ農家さんにも研修に行きました。
その間、研修先のネギ農家さんから空いている畑をあちこち紹介していただきました。
たとえ使っていない畑でも、普通は見ず知らずの人には貸さないと思うのですが、ネギ農家さんのご協力もあり、協力隊員として真剣に取り組んでいることを評価していただいて、合計4反(40アール)もの畑を借りることができました。

耕作放棄地で草ぼうぼうだった畑を、手作業で草を刈るところから始めました。耕運機は持っていなかったのですが、近くの牧場の方が大型トラクターで、無償で耕してくださったのはとてもありがたかったです。
ネギの苗はネギ農家さんからいただき、トマトは自分で持っていた種をまきました。その他、オクラやナスも植えました。

下仁田ネギは植えてから収穫するまで1年2か月もかかります。真夏に一度全て植え替えて、そこからもう少し太くしてと、とても手間がかかる野菜だということも、ここに来て初めて知りました。地域の方が一生懸命取り組んでおられるので、その伝統的な栽培方法のスキルを身に付けることが、ブランドを守ることにつながるのかなと思っています。

何も知らない素人でゼロからのスタートでしたが、地域の皆さんがすごく丁寧に教えてくださいました。必要な農機具などは協力隊の活動費で購入したものもあれば、知り合った農家さんが譲ってくださったものもあります。


Q:育てた野菜はもう販売しているのですか?

A:はい。まだ1年目ですが、出荷して売る練習をしているところです。任期中に栽培方法を身に付けることはもちろん、売るところまでできるようにならないと自立できませんから。何をどこに出荷すればよいかということも、やってみないとわからないところがあります。

今年は、道の駅やスーパーマーケットの地元野菜コーナーなど、いわゆるインショップ中心に出荷しました。値札を付けたり、ポップを作ったりもしました。トマトを170本、オクラを100本植えましたが、30本しか植えなかったナスの売り上げが一番多かったんですよ。そういうことを経験できたので、来年はナスとネギを中心に栽培して、JAに出荷しようと思っています。


Q:下仁田町で農家として暮らしてみていかがですか?

A:実家のある深谷と比べたら、夏もそれほど暑くないし、自然に囲まれて農作業をするにも気持ちのいい土地だなと感じています。もともと若いころから早寝早起きのタイプだったので、農家の生活がすごく自分に合っていると思っています。夏場は朝4時に起きて4時半に畑に出るというのが気持ちいいですよ。会社員の頃は8時半から仕事でしたが、その前に一仕事済ませられますね(笑)。

休日は自分で自由に決められますが、ほとんど休みなくやってしまいます。会社員だったら、休みがないなんて苦痛だと思う人もいるかもしれませんが、好きな仕事なのでまったく苦になりません。


Q:残りの期間や任期終了後は、どのように活動していく予定ですか。

A:周りの皆さんの力を借りて試行錯誤しながらも、農家として自立できるようになるのが目標です。

妻は、まだ前橋市に住んで別の仕事をしていますが、下仁田町には何度も来ていて、ここの環境を気に入ってくれています。農業で自立できるめどが付いたらこちらに呼び寄せて、下仁田町に根を下ろしたいと思っています。

(取材日:2021/9/16)