隊員&OB・OGインタビュー

関係人口を増やして、地域の活性化に貢献したい。

沼田市 高津 修さん 活動2年目(2019年11月~)

Q:沼田市の地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。

A:僕は、最初から協力隊員を目指したわけではなくて、沼田に移住したいと思ったのが先なんです。
東京生まれ、東京育ちですが、母の故郷が栃木県の今市(現・日光市)なので、子どもの頃に田舎で遊んだことが忘れられなくて、大人になったら田園風景の広がる中で暮らしたいと憧れていました。
ただ、社会人になると日常が忙しすぎて、そんな思いも忘れていましたが、中年になって精神的にもゆとりが出てきた頃、たまたま沼田を訪れる機会があったんです。

最初は2011年に妻と参加したバスツアーでした。たんばらラベンダーパーク、吹割の滝、果物狩り……と、次から次へとスポットを忙しく回る弾丸ツアーでしたが、バスの車窓から見た景色などがとても印象に残っていて、いい所だなと思って。
そこで次の年に、ゆっくり訪れてみようと妻が企画して、ローカル線で3時間くらいかけて来て、周辺をのんびり観光しました。その後は毎年訪れるようになり、年に2回という年もありました。玉原の星空観察会には毎回参加しています。

そうしているうちに、ペンションのご主人とか、毎回行くレストランとか、だんだん人間関係も深まってきて、沼田に縁を感じるようになっていきました。

Q:沼田に移住するに当たってのお仕事として協力隊を選ばれたのですか?

A:以前は建築会社を経営していたのですが、ITにも興味があって自社のホームページなども作っていました。その後、IT関係の会社に入って本格的に学び、独立して、建築会社時代に付き合いのあった会社のデジタル化をサポートする仕事などを行っていました。
妻は都内の企業で働いていて、妻が仕事を辞めるタイミングで移住しようと思っていたのですが、「私は沼田から通勤するから行こうよ」と言ってくれて、じゃあ、行こうかと。
それで、移住希望者が宿泊して生活体験できるトライアルハウスを4泊5日で2回借りたのですが、その時に市役所の担当者に「地域おこし協力隊の募集があるけれど、いかがですか」と勧められたのがきっかけですね。
僕のITの知識が、地域の発展に生かせればと思って申し込み、採用していただきました。

Q:実際の活動内容について教えてください。

A:「薄根地域ふるさと創生推進協議会」の事務局の運営が、僕に与えられたミッションです。薄根地域は沼田市北部で棚田が広がるのどかな農村地帯ですが、若者の流出による人口減と高齢化で、耕作放棄地がどんどん増えているのが悩みでした。そこを再生させ、外部からの人の流れを作り、活性化させることが協議会の目的です。「くわのみハウス」と名付けられた古民家が事務局で、ここを拠点に地域住民30数名のボランティアさんたちと活動しています。

メインは、棚田のオーナーさんを募って、米や野菜作りの体験をしてもらう取り組みです。今年度は6組のオーナーさんが申し込んでくださいました。ただ、コロナ禍で田植えは参加いただけませんでしたが、観察会と稲刈り、収穫祭は実施できました。

田植えは協議会で行い、草刈りなど棚田の整備も会の活動として行っています。
棚田に水路を作って、ホタルの舞う風景を再生する活動も行いました。薄根小学校の子どもたちに協力してもらい、ホタルのえさになるカワニナを増やして放流したところ、思いの外たくさんのホタルが飛んで、メディアにも取り上げていただきました。

ほかにも15種類ほどの体験メニューがありますが、コロナの影響で開催できたのは味噌作り体験くらいですね。これは好評なので、今後も行う予定です。

Q:沼田市での暮らしや地域の人々との関わりはいかがですか?

A:地域の人は、都会から来たことを珍しがって、すごく興味を持ってくれています。名刺代わりだと言って、イノシシの肉とか、熊の肉とか持ってきてくれた人もいるんですよ(笑)。
お年寄りばかりの地域なので、50代の僕が一番年下です。考え方に世代の壁などもありますが、そこは乗り越えていきたいです。
みなさん志は素晴らしくて、この地域の未来のために自分の時間をすべて捧げるってなかなかできないことですよね。だから、僕もなんとか力になりたいと思っています。

妻は新幹線で都内へ通勤しています。座って通勤できるし、上毛高原駅から東京駅まで最速66分なので、乗り換えを何度もしながら通勤する人より楽だと言っていますね。

Q:残りの期間や任期終了後は、どのように活動していく予定ですか。

A:コロナが落ち着いたら、今できていない体験やイベントを行いたいですね。今後は、農泊体験もできるように進めたいし、草を刈った後の野焼きなど、なかなか見られないことなのでイベントとして参加を呼び掛けてもいいと思います。

関係人口を増やして、ここに来れば、泊まる・食べる・観る・遊ぶ……と、いろいろできることを目指しています。コロナ禍で、田舎暮らしやキャンプなどが注目されるようになりました。それをプラスに受け止めて、今後は安心して来ていただけるようなアピールをしていきたいと思います。

それと、わざわざ都会から人を呼ばなくても、県内でも市内でも、田舎体験をしたい人はいると思うので、もっと身近なところに目を向けてもいいんじゃないでしょうか。
この地域の活性化に貢献することはもちろんですが、任期終了後は、もう少し行動範囲を広げて、沼田市全体の活性化にも関わっていきたいと考えています。

(取材日:2020/12/15)