隊員&OB・OGインタビュー

ゆくゆくは創作こけし作家として、自分の工房を構えて自立したい。

渋川市 大野雄哉さん 活動2年目(2019年9月~)

Q:渋川市の地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。

A:工業高校卒業後、エレキギターのメーカーが運営している専門学校で学び、そのメーカーに就職してギターを制作していました。その後、庭師や写真関係の仕事などにも就きましたが、「ものづくりがしたい」「手に職をつけて生きていきたい」と思うようになりました。

東京生まれですが、田舎暮らしに興味があって、地方でゆっくり仕事をするのが夢だったので、地域おこし協力隊のサイトから、自分に合いそうな活動を探しました。
いくつか問い合わせた中で、ものづくりで仕事になって、ゆくゆくは収入に結び付きそうなところということで、渋川市を選び、見学に来てみて決めました。
群馬の創作こけしは量産して全国に出荷していて、おみやげやインバウンド向けの需要もあるので、技術を身に付ければ、この道でやっていけるかなと思ったのがきっかけですね。

Q:こけしづくりの技術は、どんなふうに学ばれましたか。

A:「渋川こけし人形会」という渋川市と周辺町村のこけし作家の団体があって、創作こけし産業の後継者を育成するために協力隊を募集する計画で、僕はその第一号として採用されたんです。
直接の受け入れ先は藤川工芸さんと田村工芸さんの2か所の工房で、交互に通って研修を受けました。藤川工芸さんでは木工技術を学びました。丸太を輪切りにして切り分けて、それを筒状にし、機械にかけて、こけしの形に削り出し、研磨するという作業です。
田村工芸さんでは、こけしの形になった木地に絵付けする技術を教えていただきました。
また、渋川こけし人形会のほかの作家さんから指導していただくこともあります。

Q:現在は、自分の作品を販売されるまでになったのですね。

A:今は、「渋川創作こけしギャラリー」の一角の作業スペースで創作活動をしています。ここには、イベントなどの際にこけし作りの作業を見学していただけるように、渋川こけし人形会のロクロが設置してあるのですが、普段は使用されないのでお借りして、昔ながらのロクロで作るこけしを制作しています。
ここで、こけしの絵付け体験も行っているので、お客様への絵付け指導もしています。

まだまだ技術を磨いている途中ですが、3年間の任期終了後に起業する方法を模索しながらやっていこうと、「伊香保こけし創作室」というサイト上の店舗を作ってネット販売しています。創作こけしを広く知っていただきたいので、ターゲット層を変えて、今までになかったような個性的なこけしを目指し制作しています。
渋川の創作こけしは、もともとお土産品として盛んになったものなので、東北地方の伝統こけしと違い、形に決まりはなく、ある種なんでもありなのです。

Q:どんな作品を作っているのですか?

A:量産品は、ミズキという白い木を漂白してさらに白くしますが、僕はあえて木の感じを残すようにしています。今の時代、木を使わなくても作れるけれど、あえて木で作るので木目を生かしたいと思っています。

絵付けに使う絵具も、量産品ではあまり使われない透明水彩をメインで使っています、仕上げに水性のアクリル塗料を刷毛で塗って、木目を生かしながら淡い色合いに仕上げています。
絵はうまくないのですが、逆にそれをよしと捉えてもらえるような方向性でやっていきたいです。他の人の作品をまねても、それ以下のものしか作れませんから。あえて全然違う方向性で、個性を出したいと思っています。
ターゲット層を若く設定して、若い人が見てかわいいと思うような作品を目指しています。

形を作り、絵付けして、世界に一つしかないものが出来上がるのは、本当に楽しいです。それを手に取って評価してもらえると、もっとうれしいですね。

Q:渋川市に暮らしてみた感想は?

A:渋川は、ギターメーカーに勤めていたころ、社員旅行で伊香保温泉に来たことがありました。実際に住んでみて、特に不便はありませんが、困ったことは歩いて行ける飲み屋さんがないくらいかな。逆にお金が貯まりますね(笑)。

協力隊の中では、ものづくり関係の人と交流があります。上野村でお椀などの挽物や家具など木工品を作っている隊員たちが来てくれた際は、市内のこけし工房を案内させていただきました。
コロナ禍でイベント等が中止になり、人と集うことが難しい時期が続きましたが、僕としては創作活動に没頭できる期間となりました。

Q:任期終了後を見据えて、今後の目標を教えてください。

A:最終目標は、こけしづくりで生活できるようになることです。

任期中は創作場所もあるし、年3回開かれる「全国創作こけし美術展」にも出品できたり、渋川市のふるさと納税の返礼品に作品を採用してもらったりと、いろいろな面で市からのバックアップをいただいています。
残りの任期2年のうちに、ネットで販売している商品の商品力をアップさせて、「これは売れる!」というヒット商品を生み出したいですね。自分の名前で売れる商品、そこに行きつければ、創業も現実的になるのではないかと思っています。

(取材日:2020/10/26)