知識や技術を早く修得して、町の酪農家の力になりたい。
Q:長野原町の地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。
A:東京出身で、動物関連の仕事がしたいと思って動物園の飼育員などを養成する専門学校で学びました。卒業後は、北海道の観光ホテルが経営しているプライベート牧場で働いたり、酪農も少しだけ経験したりしましたが、職場の人間関係などに悩んで東京に戻り、しばらくアルバイトなどをしていました。
そんなとき、卒業後もときどき会っていた専門学校の先生に「長野原町で酪農部門の地域おこし協力隊を募集しているけど、どう?」という話をもらって。応募締め切りの1週間前ぐらいだったので、すぐに下見に来ました。
酪農ヘルパーとして働くということで、町としては初めての試み。酪農部門の第1期生ということにも惹かれました。
実は、北海道で酪農ヘルパーが盛んになっていて、行政も本気で取り組んでいるという話は2、3年前から聞いていたんです。それが東京から近い群馬県でも行われるということで、動物関連の仕事に戻りたい気持ちもあったので、専門学校の後輩2人と一緒に応募しました。
Q:実際の活動内容について教えてください。
A: 協力隊の酪農部門の1期生は専門学校の後輩たちを合わせて5人。酪農は一人を除いて未経験です。ぼくも専門学校で学んだのは主に小型動物で、大型は馬くらいだったので、牛の扱いは全く知りませんでした。まずは研修から始めました。酪農家さんの仕事を手伝いながら技術や知識を学びます。作業を体で覚えるために、1カ月単位くらいで牧場を何軒か回って、初歩から丁寧に教わりました。
事務所はJAの支店の一角に用意していただき、1人1台ずつ机やパソコンが支給されています。1日1回、各自事務所に行って事務作業や作業着の洗濯などを行います。
JAの職員さんと町の職員さんがタッグを組んで酪農家さんからの依頼をまとめ、ぼくたちに指示が来るという流れです。自分たちが酪農家さんから直接依頼を受けることもあります。町の非常勤職員として雇われているので、シフトを組んでもらって休みもきちんと取れます。あまり休みを取れない農家さんには申し訳ないくらいです。
朝は一番早い牧場だと4時開始。遅いところでも6時ごろから。作業は搾乳が中心です。朝夕2回と思っていましたが、3回搾乳のところもけっこう多くて、うまくローテーションしないと回りません。ぼくたちは1日2回、朝夕か朝昼に入っています。作業時間は1回2時間半から3時間です。
重機の資格は取りましたが、スピードも重要なので、大きな牧場ではまだ役に立てません。個人の酪農家さんのところで、少しずつ重機を扱わせてもらえるようになったところです。
いろいろな研修にも行かせてもらって、勉強させてもらっています。酪農の基本的なサイクルとか、エサの工夫とか。夏には、高崎市内の農林大学校に通わせてもらって、トラクターで公道を走れるように免許を取らせてもらいました。
輸入のエサは経費が掛かってしまうので、酪農家さん達は機械を持ち寄って共同で牧草などのエサを作っているのですが、完成したエサを運ぶのにトラクターで公道を走らなくてはなりません。運ぶだけなので特別な技術は必要ありません。繁忙期は農家さんにしかできない仕事がたくさんあるので、そこにぼくたちが加わったら、農家さんたちがもっと楽になると思うので頑張りたいです。
これからも、牽引免許や、中型や大型の免許などを取れば、もっと酪農家さんの役に立てるはずです。例えば、牛のエサにする稲藁を米農家さんのところに取りに行くのも、大型免許があれば手伝えます。そういったことが、2年目、3年目の課題ですね。
もう少しで管内全部の酪農家さんを回れますが、酪農ヘルパーを頼みたい酪農家さんはたくさんあって待っていただいている状態なので、知識や技術を早く修得して、もっと役に立ちたいと考えています。
Q:長野原町に暮らしてみた感想を教えてください。
A:下見のときに初めて来ましたが、標高が高くて気候的には北海道に近い、そんな場所が群馬県にあるんだと思ってびっくりしました。
1年で一番寒い2月に来たのですが、用意していただいたアパートは冷暖房がないんです。冬はストーブを使って過ごしています。マイナス17度というのも経験しました。さすがに寒かったですが、ぼくは暑いより寒い方が好きなので、何とか過ごせました。夏は涼しくて、扇風機があれば快適に過ごせますね。
誘ってもらって野球チームや町の消防団に入りました。酪農家さんはもちろん、野菜農家さんや町内で働いている人とも交流が深まりました。思ったより若い人が多くて、スムーズに仲間入りできたと思います。一度火事現場に消防団として出動したこともあるんですよ。地元のみなさんのチームワークの良さにびっくりしました。
人がやさしくて親切というのが長野原町の印象です。仲間として受け入れてもらったので、ずっと住み続けられればいいなと思っています。
Q.他の協力隊員との関係はどうですか?
A.酪農部門は男4人、女性1人の5人。ぼくが一番年上なので、一応リーダー的役割を担っています。基本はみんな別々に活動していますが、牧場を1日フルで任されたときは、1人だと何かあったときに対応できないので2人組で行くようにしています。
Q:任期終了後について教えてください。
A:まだ1年目なので、酪農ヘルパーになることや牧場の従業員になることも含めて、これからいろんな道を考えていきたいですね。
北軽井沢地区は全国的に見ても酪農に適した地域だと思います。これからも酪農で発展していく地域にするために、農協も行政もいろんな事業を考えていて、酪農ヘルパーの育成や、ぼくたち協力隊の活動もそのプロジェクトの一つだそうです。
そういう意味でも、第1期生としてがんばってプロジェクトを成功させ、町や酪農家さんたちの力になりたいと思っています。