恐竜フィギュアの新作づくりや新しいグッズの開発に取り組みたい。
Q:神流町の地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。
A:出身は仙台市で、東京で出版関係の仕事をしていました。雑誌の取材とかグラフィックデザイン、編集まで担当していました。大学では歴史学を学んで学芸員の資格も持っていて、もともと博物館で働きたいという思いがあったんです。でも、単館系の博物館だと分野が限られます。雑誌なら広くいろんなことを取材して掘り下げられると思って、出版関係の仕事を選びました。
40歳が近づいた2年くらい前から、そろそろ東京を離れたいと思ったとき、地域おこし協力隊の制度を知ったんです。
他の地域に足がかりも無かったので、この制度を使って仕事を見つけようと、募集サイトでいろんな地域を見て、神流町の恐竜センターを見つけました。
「やりたかった博物館の仕事ができる!」と思ったのが応募した動機ですね。
Q:実際の活動内容について教えてください。
A:神流町恐竜センターでオリジナル商品の恐竜フィギュアを製作しています。
活動を始めたばかりの頃は来館者向けにレプリカ作成や神流町のキャラクター「サウルスくん」の色塗り体験などの指導をしていたこともありました。
フィギュアは原型師さんに原型を作っていただいたものを複製して作ります。レジンという樹脂素材を使い、自分たちで作った型に流し、抜き出してバリを取って、接着、色塗りと、いくつかの工程を分担して仕上げていきます。技術は先輩から教わりました。恐竜センターは館内の改修工事のため閉館中ですが、開館しているときは、作業室に商品のラインナップを並べ、作業の様子を来館者に見てもらっていたんですよ。
完成品は恐竜センターの売店はもちろん、他の博物館やオンラインショップでも扱っています。形や色も細かくて、すごくリアル。一つ一つ手作業で仕上げるので、全く同じものはありません。実際にご覧になった人は、皆さん精巧さに驚かれます。
2016年に東京や大阪などで開催された「恐竜博2016」のオリジナルフィギュアも、ここで製作しました。
売れ行きはよくて、今夏は東京の「博物ふぇすてぃばる」で販売したところ、「わぁ、すごい!」ととても評判になりました。
現在は来春のリニューアルオープンに向けた新作を出すため頑張っています。
Q:神流町に暮らしてみた感想を教えてください。
A:実は、神流町がどんなところか全く知らずに、恐竜の博物館の中で仕事ができるということだけで応募したんです。来てみて、まず自然の美しさに感動しました。川の水もきれいだし、新緑や紅葉も素晴らしい。
東京に住んでいた頃は車に乗っていなかったので、初めは交通手段が不安でしたが、車を使えば不便は無いですね。ここではリースして乗っています。都心部から山間部に来ましたが、意外と生活のギャップは感じていませんね。買い物なども、特に不自由を感じたことはありません。
町営住宅の住み心地も抜群ですよ。2LDKで、一人で住むには十分過ぎるくらいです。
フィギュア製作だけでなく、自分にお手伝いできることがあればと思って、先日は神流マウンテンラン&ウォークというイベントで、コース整備や選手受付などのボランティアをやりました。今年から町の消防団にも参加しています。
Q.他の協力隊員との関係はどうですか?
A.神流町の協力隊員は私を含めて2人。今年活動を始めた隊員は一緒にフィギュア製作をしています。隊員同士というより、以前から働いている地元の人も含めて、毎日4人で協力しながら作業を進めていますね。他のセンター職員にも親しくしてもらっていますよ。
また、協力隊OBで神流町に住み、ケーブルテレビの仕事をされている人もいます。
Q:任期終了後について教えてください。
A:終了後のビジョンはまだ具体的には描けていないのですが、休館中の今は、フィギュアをただ生産するだけじゃなくて、いろいろ新しいことを試みられる期間です。新作に取り組んだり、既存のマグネットだけだったものをキーホルダーにしたりとか、素材も地元の木材を生かしてはどうかとか、ここに残って、そういう新しいことにチャレンジする道も考えています。
フィギュア製作はまだ歴史は浅いけれど、やっていること自体は伝統工芸のようだと思うんです。この町ならではの工芸品として、自分が教えてもらった技術を、次の人にも伝えていけたらという思いもあります。
恐竜の化石が発見された町は関東で唯一、全国でも少ないのですが、まだまだ知名度が低い。私も協力隊で来るまでセンターの存在を知りませんでした。でも、来てみて展示物のすごさに驚きました。ここまでとは想像していなかった。タルボサウルスの骨格展示とか格闘恐竜の展示とか。展示だけでなく、発掘体験もやっているし、恐竜の足跡化石も見られます。
来春、リニューアルしたら、もっとたくさんの人に訪れてほしい。そのために、私にできることで役に立てればと思っています。