羊を使った特産品開発に挑戦して、前橋市の観光振興につなげたい。
Q:前橋市の地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。
A:前橋市の前に、長野県の木島平村というところで3年間、地域おこし協力隊を務めました。そこでも羊を飼って、羊の肉を使った特産品開発に取り組もうとしていましたが、村の方針転換で事業が中止になってしまったんです。
それで、他の自治体で同じような活動ができるところがないかと探して、前橋市の協力隊に応募しました。
前橋市は“TONTONのまち”を標榜して豚肉料理を特産として売り出していますが、東京オリンピック・パラリンピック2020を控えて海外からの観光客を呼び込む中で、宗教的に豚肉などを食べられない人も増えてきますね。そこで、羊肉を使った特産品を開発すれば、これからの観光振興の役に立つのではと思って。
Q:実際の活動内容について教えてください。
A:前橋市の地域おこし協力隊1期生5名のうちの一人として赴任しました。最初の年は、他のメンバーと一緒に地域のイベントスタッフとして運営補助活動や、農業支援を主にやっていました。
また、赤城山DMO(デスティネーション・マネージメント・オーガニゼーション)にも参加して、情報誌「AKAGIFT」の編集委員として取材に同行するといった活動もありました。
2年目からは、当初の目的だった羊に関わることができるようになりました。
もともと赤城白樺牧場では牛を放牧していましたが、一昨年くらいから放牧しなくなって、牧場なのに動物はいないのかという観光客の声を受けて、羊の飼育経験がある私に声がかかったというわけです。
今年の9月に、岐阜県中津川市で生まれたサフォーク種のメス5頭を運び入れ、柵が完成するまではテントの中だけで飼っていました。今は少しずつ外にも出しています。
来年はツツジの咲く6月頃から10月末まで放牧する予定です。観光客からも「あら、可愛いわね」などと声をかけられ、評判は上々ですね。
市内で馬を飼っている金井牧場さんにもお世話になり、冬の間は山から下ろしてそこに預ける予定になっています。観光的にはこの広い牧場に5頭ではさびしいので、今後頭数を増やせればいいなと思いますが…。
春になったら毛刈りもしなくてはなりません。サフォーク種からとれる羊毛は太くて硬いので、セーターなどには向いていませんが、靴下に使ったり、ニードルフェルト人形を作ったりするのには向いています。先日、赤城山頂の施設で人形作りの講習会も受けたんですよ。
羊肉を使った特産品開発については、木島平村の協力隊のころから試作品は作っていますが、私が作っても家庭料理の域を超えることは難しいので、協力隊同期で料理人の伊藤隊員に協力を仰いで、考案した試作品をブラッシュアップしていければと思っています。
Q:他の協力隊員との関係はどうですか?
A:他の協力隊員と一緒に仕事をすることもあります。農業体験などでは参加者と一緒に農作業をしますし、ピザづくり体験教室や竹灯籠づくり体験ワークショップなどでも、メイン講師役の協力隊員にアシスタント的な役割でついていっています。逆に、羊の仮小屋テント設営や柵の補強作業の時には、他の隊員に協力してもらうこともありますね。
各地域にある「地域づくり協議会」同士の交流のための「地域づくり連絡会」にも毎月参加していて、連絡会委員長で協力隊の世話役でもある鈴木正知さんとは月2回ミーティングがあります。
隊員の年齢はまちまちですが、みんなで協力してうまくやっていると思いますよ。
Q:任期終了後について教えてください。
A:羊を飼っているだけでは収入にはならないので、特産品開発をして、なんとか自活できるようになりたいと思っています。
ただ、今は羊がかわいいと喜ばれていますが、それを肉にして特産品を作ることが果たしてどれだけ受け入れられるか、不安要素はあって。
どこの地域でも抱えている問題だと思うのですが、新しいことを始めることに消極的な人が多いので、なかなか一緒に活動してもらうのは難しいなと感じているところです。
私が始めたことに関心を持ってくれる民間企業に出会えればいいなと思っています。ここで羊を飼うのは、そのためのデモンストレーション的な意味もあるんですよ。
活動も2年目になって、各方面からいろんな情報も入ってくるようになりました。応援してくれる企業が見つかって、活動が広がってくれば、なんとか道が見えるかなと。
事業がうまくいけば、ずっと群馬で暮らしたいと思っています。