隊員&OB・OGインタビュー

地域の人を巻き込んで輪を広げ、農業と観光と地域を結びつけたい。

みなかみ町 西坂 文秀さん 活動1年目(2017年4月~)

Q:地域おこし協力隊になる前の活動について教えてください。

A:私は元々愛媛県の越智今治農業協同組合で専業農家の支援に携わっていました。当時は専業農家が年々減っていき、兼業農家に置き換わっている時代でした。時代の変化の中で従来型の大規模専業農家支援に疑問を感じ、小規模な兼業農家を支援していく必要性を感じていました。
家庭菜園の延長のような小規模な生産者に目を向け、キュウリやナスなどの野菜を1本からでも販売できるような仕組みとして直売所を開設するのがいいなと思いました。

越智今治農業協同組合の中で手を挙げて、小規模農家などを対象とした直売所「さいさいきて屋」を始めました。最初は30坪程度の店舗を2人のパートさんと切り盛りしていました。3年目で年間売上1億円を目指すという目標を掲げていましたが、時代のニーズに上手く合っていたせいか、初年度で年間売上2億円を達成することができました。

実際に始めてみると、各方面から想像以上の反応がありました。
生産者が畑から直接野菜などを持ち込むため、消費者に届くまでの時間が圧倒的に短くなり、消費者は新鮮でおいしいものを購入できるようになりました。
また、直売所では生産者名を表示して販売していますので、どこの誰が作っているものかわかるようになり、安心して購入できるようになりました。
生産者にとっても、農協には出荷できなかった小ロットのものを販売できるようになり店舗には自分で持ち込んでいますので、自分の商品の売れ行きがわかります。売れ行きがわかるともっと売り上げを伸ばしたいと生産者が創意工夫をするようになります。
直売所を運営する事業者としても、生産者から消費者に市場や卸を通さず販売できるため、一定の利幅が確保できます。
「さいさいきて屋」は消費者、生産者、事業者にメリットのある三方よしの事業となり、どんどん成長することができました。テレビ東京の番組「カンブリア宮殿」でも紹介されました。

Q:みなかみ町の地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。

A:テレビで紹介されたことで色々なところから講演を依頼されるようになりました。都内で講演していた時にみなかみ町の職員が参加してくれており、みなかみ町に講演に来てくれないかと誘われました。その後も何度か講演の依頼をいただきました。
みなかみ町との交流を深める中で、道の駅たくみの里の直売所の再生や地域全体の活性化のために来てくれないかと誘われ、ちょうど越智今治農業協同組合を退職する時期と重なったことから、地域おこし協力隊として活動することにしました。
今思うと、みなかみ町の職員に上手く誘い込まれたなぁとも思います。

Q:日々の活動内容や活動を通じて感じていることを教えてください。

A:道の駅たくみの里で直売所の運営や6次産業化に取り組んでいます。
みなかみ町は非常にポテンシャルの高い地域だと思います。新幹線の駅があって東京にアクセスが良く、ラフティングやバンジージャンプなどの今時の観光コンテンツも揃っています。私は今まで四国という海に囲まれた中で活動してきましたが、みなかみ町では全く違う形の地域再生に取り組むことができると考えています。
今までの活動経験をもとに、農業と観光と地域を結びつけるようなストーリーを描いていきたいです。

道の駅たくみの里では、スイーツに重点的に取り組んでいます。みなかみ町はりんごやサクランボなどスイーツの材料となる果物をたくさん栽培しています。そこでみなかみ町で生産された材料を使ったケーキなどを開発しました。愛媛県の知り合いのパティシエが開発を手伝ってくれました。
外国産の材料を使えばコストを抑えることができますが、たとえ値段が少し高くなっても、地域の材料や素材を使って地域経済を回していくことのほうが大切です。
また、道の駅たくみの里に来ていただいた方に楽しんでもらうため、新しく藁アートを始めました。

自分は道の駅たくみの里で新しいアイデアを出す役割だと思っています。自分には特別な能力があって何かを生み出せるわけではなく、地域の人を巻き込んでいって、その輪をどんどん広げていきたい。そのためのきっかけづくりや仲間づくりに取り組んでいます。

Q:みなかみ町に暮らしてみた感想を教えてください。

A:愛媛県今治市との気候の違いはやはり感じます。みなかみ町は断然寒く、それに1日の気温差が大きいです。昼間は太陽が出て暖かくても、夜になると一気に冷え込みます。

また、みなかみ町の方は皆さん親切で優しいです。四国から来た私に親切に色々と教えてくれます。

Q:今後の目標を教えてください。

A:今後は地域の中で良いものを繋げていって、点を線に、線を面にできるような活動をしていきたいです。地域の特定の人だけが利益を得るのではなく、地域全体で協力し合いながら成長していくことのできる仕組みを考えていきたいです。
そのためにも、現在活動している道の駅たくみの里を里山ディズニーランドにしていきたいと思っています。