「また来たい」のために、伊香保の魅力を伝えていきたい。

Q:地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。

A:もともと私は、「地域の人と一緒に仕事をしたい」「地域の役に立つことがしたい」という思いを持っていました。その気持ちが強くなったのは、短大時代に地域の特産品を広める活動に関わったことがきっかけです。まだ有名ではない商品をイベントなどでPRするために、生産者や行政、近隣の学生と一緒に企画会議や運営に携わり、商品開発にも関わりました。立場の違う人たちと何かを一緒につくり上げていく時間が楽しくて、「地域に密着した仕事がしたい」と強く思うようになりました。
卒業後は飲食店に就職しましたが、地域に関わる仕事への思いを諦めきれず、退職しました。本当にやりたい仕事を探そうと思っていた矢先、地元・山梨県都留市の地域おこし協力隊の方と出会いました。協力隊と地域の人が気軽に話す会に参加したその日、「私がやりたい仕事はこれだ」と直感的に感じ、地域おこし協力隊を目指すようになりました。
最初は地元で活動したいという気持ちが強かったのですが、全国の協力隊と話す機会や募集セミナーに参加する中で、「若いうちに一度外に出るのもいいのでは」と背中を押されました。観光分野で活動したいと考えていた私は、調べる中で群馬県に観光系の募集が多いことを知り、渋川市のほか、四つの市町村を実際に見学しました。初めて訪れた伊香保温泉に「なんてワクワクする場所なんだろう」と強く心をつかまれ、群馬県も伊香保もすべてが初めてでしたが、距離的にも車で2時間ほどと、いざというときに帰れる安心感があり、最終的に渋川市を選び、応募しました。
Q:隊員だった時の活動内容について教えてください。

A:2019年8月に着任し、観光振興・情報発信を担当しました。1年目は、何も分からない状態からのスタートで、先輩隊員に同行しながら写真撮影や取材、情報発信の方法を学ぶ日々でした。その矢先に新型コロナウイルスの流行が始まり、イベントはすべて中止となりました。外に出ることも難しい中で、「今できることは何だろう」と考え、情報発信に力を入れました。伊香保や渋川が「コロナ明けに行きたい場所」になるよう、Instagramをほぼ毎日更新し、観光地だけでなく田園風景や山の景色など、日常の美しさを発信しました。また、市が発行する地域商品券のデザインを任される機会もありました。デザインの経験はほとんどありませんでしたが、挑戦したことがきっかけで、仕事の幅が広がりました。
3年目となる2022年、伊香保石段街を舞台にしたイベント「伊香保ACAPPELLA STAIRS」を企画・開催しました。学生時代からアカペラが好きで、「伊香保の石段街は階段そのものがステージになる」と感じていたことが発想の原点です。初回は2日間で約400人が参加し、回を重ねるごとに規模は拡大しました。3回目となる2025年には、2日間で1300人・220組が参加するイベントへと成長しました。全国各地から訪れた参加者の約6割が伊香保周辺に宿泊してくれたことに加え、地域の方から「また来年もやろう」「また協力するよ」と声をかけてもらえてことは、「地域の役に立ちたい」という思いを少しは形にできたのではないかと感じています。
Q:協力隊時代の活動の中で印象的だったことを教えてください。
A:コロナ禍による特例措置で2年延長となった4年目は、協力隊として最も濃い1年でした。地域の方から声をかけてもらう機会が増え、田植えや地域イベントの手伝い、敷島駅での駅前イベントの運営など、さまざまな活動を行いました。自分がどこにいるのか分からなくなるほど、市内のいろいろな場所に出かけていました。2024年3月に敷島駅が開業100周年を迎えるにあたり、かつて商店街だった場所の地図づくりに取り組んだことをきっかけに、「敷島駅前屋台村」という月1回のイベントが始まりました。運営や装飾、チラシ制作を担当し、地域の方と一緒に形をつくっていく経験は、私が短大時代にやりたいと思っていた「地域の人の役に立つ仕事」そのものでした。
Q:現在の活動を教えてください。

A:2024年3月31日、敷島駅100周年イベントを最後に協力隊を終了しました。その後は個人事業主として、主に、伊香保にある観光施設「IKAHO HOUSE 166」の管理と、「いっぷく館」の活用に取り組んでいます。2024年10月からIKAHO HOUSE 166のリノベーションや、情報発信といった開業準備に携わり、同年12月のオープン以降は、週3日間、施設内の掃除や取材対応、掲示物の制作などを行っています。また、以前から気になっていた「いっぷく館」を、現役の地域おこし協力隊員と協力して拠点として再整備しました。仲間が増えたことで、一人ではできなかった活動にも取り組めるようになっています。外国語が話せる隊員が外国人向けの案内を行うなど、現在さまざまな企画を練っています。
Q:これからの目標を教えてください。

A:今後もアカペライベントを継続しながら、伊香保で人と人をつなぐ仕掛けを増やしていきたいと考えています。協力隊の仲間とともに、ガイドツアーやインバウンド対応、伊香保温泉のマスコットキャラクター「いしだんくん」を活用した情報発信などにも挑戦していく予定です。アカペラをきっかけに伊香保に訪れた方々が、温泉やその周辺を存分に楽しみながら、伊香保で暮らす人々の温かさや魅力にふれ、「また来たい」と思えるような機会をつくりたいです。伊香保の一番の魅力は「人」だと思っています。話せば話すほど面白く、また会いに来たくなる人たちがたくさんいる。その魅力を、これからも自分なりの形で伝えていきたいです。
Q:これから隊員を目指そうと思っている人に向けて、アドバイスをお願いします。
A:特に観光分野においては、積極的に地域の人と関わることが大切だと思います。私の活動も、地域の方々の協力があってこそ成り立っていました。地域の方々と関わるきっかけとして、私は「渋川市地域おこし協力隊」と書かれた緑色のTシャツをよく着ていました。Tシャツが自分のアイコンとなり、名前までは知らなくても「緑の子だよね」と覚えてもらえることが多かったです。現在は「いしだんくん」のTシャツを頻繁に着ていて、会話のきっかけになることも増えました。Tシャツや帽子など、何か自分の目印となるものを毎日身に着けることは、地域に入り込みやすくなる一つの手段だと思うので、個人的におすすめです。
(取材日:2025/12/10)