隊員&OB・OGインタビュー

私たちの地域おこしのかたち、ナンモクジビエ。

南牧村 宮﨑 大輔さん、宮﨑 テオドーラさん 大輔さん OB(2020年4月~2024年3月)、テオドーラさん OG(2021年4月~2024年3月)

Q:地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。

大輔さん:前職を辞めようかと考えていた頃、たまたまインターネットで「地域おこし協力隊」という制度を知りました。東京中心の仕事をしていたので、ずっと東京にいなければいけないと思っていたのですが、辞めると決めた瞬間に「どこに行ってもいいんだな」と思えたんです。そんなタイミングで地方に住むという選択肢が初めて現実味を帯びてきました。
全国の募集を見ている中で、ツーリングが趣味だったこともあり、よく走っていた群馬県に目が留まりました。南牧村はバイクで通ったことがあり、ニュースで「高齢化率日本一」として名前を見たこともあって印象に残っていました。募集要項を見てみると、「定住に向けた生業づくり」という、かなり自由度の高い内容で、他の自治体のように明確なミッションが決まっていなかったんです。正直、その時点では地方で何をしたいのか明確ではなかったので、「行ってから考えられる」という点が自分にはぴったりだと思い、応募を決めました。

テオドーラさん:私が南牧村を知ったのは、NHKの外国人向け番組のリポーターとして群馬県を訪れ、妙義山と南牧村を紹介したことがきっかけです。ちょうどその頃、コロナ禍が始まり、博士論文の執筆を控えていた私は、東京の狭い部屋では集中できず、思い切って南牧村で1か月部屋を借りて論文を書くことにしました。紅葉に囲まれた静かな環境で過ごす中で、季節の移り変わりを肌で感じながら生活できること、そして近所の方々が気にかけて声をかけてくれる温かさに、都会にはなかった魅力を感じるようになりました。
博士課程修了後の進路に悩んでいた時、南牧村で仕事がないかと相談したところ、地域おこし協力隊という制度を紹介していただきました。「3年間あれば、やりたいことが見つかるかもしれない」と助言をいただき、応募することを決めました。

 

Q:隊員だった時の活動内容を教えてください。

大輔さん:着任したのは2020年4月、ちょうどコロナ禍の始まりでした。初日から自宅待機になり、村の外にも出られず、人とも関われない状況が続きました。ようやく外に出られるようになっても、人と接しないようにと草むしりばかりの日々で、「自分は何をしに来たのだろう」と思うほどつらい時期でした。 そんな中で、村の臨時職員の方と一緒に作業をする機会が増え、少しずつ村の人たちと顔見知りになっていきました。もともと移住したらやりたいと思っていたのが狩猟で、1年目は狩猟免許や猟銃・わなの資格取得に力を入れました。有害鳥獣駆除の存在を知り、これなら一年を通して関われるし、地域の役にも立てると思ったんです。 最初は鹿肉の食肉利用を考えましたが、群馬県は放射能の出荷制限地域で難しいと言われ、一度は諦めました。それでも鹿が大量に捕獲され、捨てられている現実を見て「何とかできないか」と思い、皮を使ったレザークラフトに挑戦しました。
2年目に、同じ協力隊として南牧村に来ていたテオと出会い、シカの角や骨、皮などを活用する話で意気投合しました。二人で活動する中で、全頭放射能検査を行えば出荷制限を解除できる仕組みがあることを知り、「それなら自分たちにもできる」と、ジビエ処理施設の設立を本格的に目指すようになりました。

テオドーラさん:私は英語ができることを活かして保育園の子どもたちと関わったり、観光や地域資源に目を向ける活動をしていました。中でも印象的だったのが、鹿の存在です。畑を荒らした鹿が駆除され、多くが活用されずに捨てられていると知り、「骨や角を使って何かできないか」と考えるようになりました。そんなとき、同じ協力隊で鹿の駆除に携わっている人がいると知り、わな猟の実際の現場を見せてもらいました。その後、私自身もわなの免許を取得。初めて自分のかけたわなに鹿がかかった時は、正直とてもつらく、泣きそうになりました。これまでスーパーで買うお肉しか知らなかった私にとって、それが生きていた命だったという現実を初めて実感した瞬間でした。でも、その鹿をきちんと解体し、食べ、無駄なく使うことで、食べ物や命に対する向きあい方が大きく変わりました。

大輔さん:3年目、4年目(コロナ禍による特例措置で1年延長)は、各地のジビエ施設を見学し、セミナーにも参加しながら構想を具体化していきました。ただ、施設建設や補助金の話はなかなか進まず、資金面では本当に苦労しました。最終的には村の支援もあり、任期終了後にようやく施設建設が実現し、群馬県で2例目となる出荷制限解除施設として「ナンモクジビエ」をスタートさせることができました。

 

Q:現在のお仕事を教えてください。

大輔さん:現在は、鹿肉の食肉販売だけでなく、ペットフードやジャーキー、皮を使ったレザー製品の製作にも取り組んでいます。小規模だからこそ、鹿を余すことなく使い切ることを大切にしています。

テオドーラさん:ジビエ施設の話が進み始めてからは、村の方々が本当に親身になって応援してくれました。「大変でしょう」「でも頑張ってね」と声をかけてもらうだけで、前に進む力をもらえました。今では、他の駆除員の方からも「使っていいよ」と鹿を分けてもらうこともあり、地域に支えられて活動できていると強く感じています。

 

  

 

Q:これからの目標を教えてください。

大輔さん:鹿肉の販路を広げていくのはもちろんのこと、一般の方にも手にとってもらえるような、鹿肉を使ったカレーやソーセージなどの加工品を開発しています。将来的には、鹿肉を食べられる飲食店や体験型の観光を通じて、南牧村を目的地として訪れてもらえる場所をつくることが目標です。大きなことはできなくても、自分たちにできることを一つずつ積み重ねていきたいと思っています。

 

Q:これから隊員を目指そうと思っている人に向けて、アドバイスをお願いします。

大輔さん:知らない地域で活動するのは大変で、地域の状態や実情もそれぞれだと思います。ただ、どこでも共通して言えることは、結局のところ人付き合いや人との関係性を一番大切にしなければいけないということです。協力隊の短い3年間で、新しいことを始めながらさまざまな人との関係づくりも進めていかなければなりません。これは決して簡単なことではありませんが、時には考えなしに飛すぎずに飛び込んでみることで始まることもあると思います。

テオドーラさん:地域の方々と価値観の違いからすれ違うこともあるかもしれません。そんな時は、相手へのリスペクトを持ち続けることで、最終的には良い関係になれると思います。また協力隊になる前や1年目のうちに、その地域で続けていけるかをよく見極めることが大切です。実際に現地を訪れ、地域の雰囲気や生活環境、地域行事への関わり方などを確認した方が良いと思います。自分の性格や求める地域との関わり方に合った暮らし方を選ぶことが重要だと感じています。

 

 

(取材日:2025/11/26)

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