『運命のほし農eN計画』で休耕地の復活に挑戦する。
Q:地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。
A:群馬への帰郷を考えているときにツナグンマを見たことがきっかけです。出身が桐生市の養蚕農家だったのですが、農業より工業という時代の中で、家は継がずに埼玉のトラック製造会社の技術者として働いていました。 50歳を過ぎた頃から、草だらけになってしまった家の畑や老いていく父母を思うと忍び難く、群馬に帰りたいという思いが強くなり、子育てが終わったタイミングで群馬に帰って事業を起こす決意をしました。しかし、起業するための資金や知識が乏しく悩んでいて、その時に偶然出会ったのがツナグンマです。 協力隊は3年間の給与と時間と、ある程度の自由があるということで応募しました。
Q:活動内容について教えてください。
A:活動は主に3つあります。(1)鬼石の魅力発信のためのSNSの運営(2)鬼石振興課の補助業務(3)空き家対策の推進担当です。特に空き家対策については、約1年かけて制度化を果たした空き家の紹介制度 「おにしん家」 が6 月にリリースし、空き家の所有者と移住希望者のニーズがマッチする物件探しと紹介対応に精力を注いでいます。他の業務も疎かにはできないので、職場の仲間に協力してもらいながら、とても忙しい毎日でありますが、充実した日々を過ごしています。
Q:活動の中でどんなところにやりがいを感じますか?
A:着任時の鬼石地域の空き家対策は、空き家は無数にあるものの、紹介できる物件はゼロという状況でした。移住促進活動を担当する鬼石総合支所の鬼石振興課では、紹介できる空き家が絶対に必要でした。最初の数ヶ月間は、とにかく現状調査に集中しました。 国や県の方針、市のバンクに登録されていない理由、空き家の所有者の現状や心境、先進地域の成功要因など、リアルな情報を掻き集めては分析、相談、対策を練り、提案し承認を得て、地域に最適な空き家紹介制度の開発を官民協業型のプロジェクトとして立ち上げました。大変でしたがその分やりがいもあり、鬼石の空き家問題について、皆で知恵を出し合い、力を合わせて克服することができました。前職の経験を存分に活かせる環境や温かい人たちに恵まれて良かったです。
Q:藤岡市の魅力はどんなところにありますか?
A:SNSで魅力発信の活動を通じて、藤岡は山に囲まれているところに大きな魅力を感じます。 特に桜山の紅葉と冬桜が好きです。冬桜は春の満開の桜のような華やかさはないのですが、冬の寒い時期にぽつぽつと咲き、風に吹かれながらも枝にしがみついて頑張っているところが、何とも言えず大好きです。魅力の配信を担当する身でありながら、どのように表現して良いかと悩ましいところでもあります。あとは、ユニークな人が多く集まっているところです。皆さんフットワークが軽く、新しい事業や取り組みに対して受け入れの度量が深いので、斬新な企画や無理な相談も前向きに検討してもらえます。協力隊同士も仲が良いので、よく 一緒に集まってお茶をしたり、定期的にテニスをしたりと親睦を深めています。
Q:これからの目標を教えてください。
A:空き家対策の仕組みも整い、その過程でどっぷり地域に溶け込むことができたので、 いよいよ志望動機でもあった休耕地を復活させる事業に着手したいと思います。中山間地域の空き家の隣には必ず雑草だらけの休耕地や放置された農機具が存在しています。これらも全てよみがえらせたいです。自給自足で生活したい相談者も多く訪れているので、菜園したい人と畑の所有者とを繋ぐ畑版のおにしん家がやれればという夢を描いています。
今考えているのは、「不毛の地に恵を生むエンジョイ農法の浸透 『運命のほし農eN計画』 プロジェクト」です。今後10ヶ年の計画で、鬼石を起点に休耕地を開墾し神流川流域を活動エリアとして徐々に拡大し、利根川の合流地点までをオーガニック系野菜の主要産地として創生する壮大なプロジェクト計画です。(詳しくは、 ほし農eNインスタグラム@enplanningにて)
食糧の多くを輸入に頼っていながら大量に廃棄している今の日本の現状を、身近なところから変えていってはどうか、というのがコンセプトです。そして畑や空き家を再生し、自給自足な暮らしをお手伝いできればと考えています。農地には、空き家よりも様々な法律や手続きがあり、ハードルは一段と高くなりますが、難しい方がやりがいも高まるので、必要な知識を勉強しながら進めていきたいです。
Q:これから協力隊を目指す人へメッセージをお願いします。
A:協力隊の活動は自治体との相互関係がとても重要だと思います。時には、自治体とのコミュニケーションがうまくいかないこともありますが、自分のやりたいことばかりを主張するのではなく、自治体と地域住民の中間の位置に立って、地域の課題や自分にできることを考えてみることも必要です。3年間という限られた期間なので、焦る気持ちも分かりますが、自治体から依頼された業務が自分のやりたかった事に繋がることもあるので、自分に託されたことは何なのかを深く考え、やってみることも必要な過程だと思います。面談の際には、自治体とよく話し合い、双方で誤解や認識の相違がないように慎重に確認していくべきだと思います。まずは、自分に何を求められているのかをよく聞き、そこから自分のできることを提案していくことがポイントです。双方で一致する道を探すのは、時間がかかることもありますが、納得するまで話し合ってください。協力隊になる以上は、それくらいの覚悟をもってきた方が自分のためになると思います。すべて自由に活動できるわけではないので、 限られた時間と資源とでなんとか工夫するのが肝要です。そして今の仕事の延長線上に3年後の自分の目標を置くのが最も効率が良いかと思います。連携と協調と信頼と絆を大切に、頑張って!!
(取材日:2024/11/12)