キッチンカーで高山村の野菜のおいしさを広めたい。
Q:地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。
A:きっかけは、千葉県から高山村への移住でした。夫と山のある生活がしたいという話をしており、自分たちの生活にフィットする生活の場を求めて移住先を探していました。
正直、群馬県は選択肢にありませんでしたが、友人が群馬県で暮らしているということもあり、観光のついでに1度来たことがありました。その時、嬬恋から沼田に向かう道中にあった高山村のたまたま入ったお店で高山村の移住・定住コーディネーターの方と出会い、話を聞くことができたので、移住先の候補として考えるようになりました。その後、2回ほどお試し住宅で移住体験をさせてもらい、野菜のおいしさや景色の美しさ、暮らす人たちに惹かれたため、村を知ってから半年くらいで移住を決めました。
地域おこし協力隊の存在は、役場職員や移住・定住コーディネーターの方に教えてもらい、入隊を斡旋していただきました。移住先では、自分のお店を開きたいという目標があったので、最初は悩みましたが、協力隊の制度を調べていく中で自分のステップアップになるかもと思い、応募しました。
Q:活動内容について教えてください。
A:活動当初は、道の駅内にある「たかやま未来センター さとのわ」の立ち上げメンバーに加わり、村の職員やメンバーと会議を重ねていきました。飲食に携わってきた経歴があるため、就任する前は施設内にある加工場での活動を予定していましたが、自分の今までの経験を伝えたところ、カフェの立ち上げと店長を任されることになりました。立ち上げ時に、村からピザの提供が条件にありましたが、店舗の立ち上げやピザは未経験だったため、かなり奮闘しました。
現在は、他のスタッフにお店を引き継ぎ、任期を半年間延長して「3kaku food stand」という屋号で、高山村の野菜のおいしさを広めるためにキッチンカーの運営をしています。自分からお客さんのいるところへ向かっていけるので、たくさんの出会いや発見が待ち受けていて楽しいですね。
「3kaku food stand」は、高山村にある三並山が由来になっていて、3つの山(三角)が並んだ風景をお店のアイコンにも使用しています。日常では味わえないものを提供することを目指した「非日常ごはん」をコンセプトに、高山村の旬の野菜や群馬の食材を使用し、スパイスやハーブをプラスした創作メニューを提供しています。
Q:カフェ立ち上げ時のメニュー開発について詳しくお聞かせください。
A:高山村の野菜はとにかくおいしく、このおいしさを活かしたメニュー構成にしたいと思い、村オリジナルのピザをコンセプトに「ビーツなサラダピザ」というメニューを開発しました。高山村はビーツという野菜が自慢で、初めて食べた時は、本当にみずみずしくて甘く驚きました。そこから、ビーツで作るピザを思いつきました。見た目が赤くルッコラもたっぷりのせているビーツピザは、見た目のインパクトも強く、最近はテレビで紹介されることもあります。自分が創作したメニューが多くの人の目に留まり、実際に食べに来てもらえているのはうれしいですね。他にも、高山村は大豆がおいしい地域なので、高山村の味噌を使った味噌ベースのピザも開発しました。
どのメニューも、高山村でしか食べられないものを作りたいというのが根本にあります。ピザの経験はゼロからだったので、苦労や大変なこともありましたが、自分で考えたものが形になっていく過程が、カフェの立ち上げ活動の中で一番楽しかったです。
Q:高山村の良いところや、暮らしの中で大変だったことを教えてください。
A:村の良いところは、農産物のおいしさです。あとは、初めて来た時に、本当にきれいな村だと思いました。見ての通り何もないんです。何もないのですが、それを守る村の人たちと景観が魅力で、可能性に溢れている村だなと思いました。
元々自然の中での生活に憧れていたので、暮らしの中でギャップを感じることはありませんでした。ただ、協力隊は期間限定のイメージが強く、定住しない場合も多いので、風当たりの強さを感じることはありました。そこは、変えていかなければと思ったので、とにかく地域の人と話すことを心がけました。農家さんに野菜について話を伺いに行ったこともありました。話をしてみると、皆さんそれぞれに個性があり、本当に村が好きだという気持ちが伝わってきました。今も、直接野菜を買わせてもらっている農家さんがいて、飲食業に携わる者として、とても幸せに感じています。
Q:これからの目標を教えてください。
A:まずは、今やっているキッチンカー事業を軌道に乗せたいです。現在は、県内のイベントを中心に出店をしていますが、今後は群馬県外での活動も視野に、微力ながらも高山村の野菜のおいしさを広めていきたいです。高山村は任期中でも、最初に提示されたミッションがある程度形になれば、自分のやりたいことを尊重してもらえる環境なので、バックアップ体制が整っていると感じています。任期を半年間延長したのも、最初の2年間は自分の為に時間や活動費を使えなかった事から、担当の方から提案してもらい決めました。キッチンカーが今年で2年目になるので、延長した期間を有効活用し、退任後の活動のための基盤を固めていきたいです。
Q:これから地域おこし協力隊を目指す人へメッセージをお願いします。
A:協力隊としての3年間はあっという間です。その3年間を有意義な期間にするには、こうでありたい、こうなりたいというビジョンがあった方が充実した時間を過ごせると思います。自治体によっては、行政とのミスマッチで活動がうまく進まないということもあり得ることなので、たくさんコミュニケーションをとって自分のやりたいことを口に出していきながら、そこに向かって活動できる方が良いのではないかと思います。
(取材日:2024/11/13)