隊員&OB・OGインタビュー

隊員時代に起業し、体験・交流型民泊施設をオープン。

高山村 野口賢人さん OB(2018年2月~2021年1月)

Q:地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。

A:県内の大学の情報関連学部でサイト構築などを学んだ後、都内のIT企業に就職しました。学生時代からいずれ起業したいという夢を持っていたので、まずは企業に入ってITの知識をもっと深めたかったからです。
その後、群馬に戻ることを考えていたときに、都内で開かれた群馬県の地域おこし協力隊の説明会に出かけたことがきっかけです。参加していた町村の中に高山村がありました。実は、高校生の頃から赤城VYSという団体に所属して、就職してからも北毛青少年自然の家でボランティア活動を続けていたので、高山村には親近感がありました。
村の担当者と話してみて、協力隊の活動が目指す起業へのステップになると考え、応募して採用していただいたという経緯です。


Q:隊員だったときの活動内容を教えてください。

A:3年間通しての活動は、ガイドボランティアの事務局業務です。高山村には、戦国時代の真田街道、江戸時代の三国街道沿いに貴重な史跡がたくさん残っています。また、気軽に登れる山もあるので、史跡や山登りのガイドさんたちの事務局を務めました。
また、Facebookで村の情報発信にも取り組みました。村内を回って写真を撮り、着任当時はほぼ毎日更新していました。

そういう活動を続けながら、1年目の終わり頃、個人事業主として「satera」をスタート。事業名は衛星という意味で、高山村を中心にさまざまな業種を展開していきたいという思いを込めています。まずは、その場で作れるオリジナル缶バッジの製造販売。それから、食品衛生責任者の資格を取り、閉店したパン屋さんを加工場として借りて、お弁当やお菓子を作って道の駅で販売を始めました。
基本的に、今、何が高山村に足りなくて、何が売れるのかを考えながら活動していくスタンスです。思いついても、壁があって実現に至らないことも多々ありましたが……。


Q:民泊施設を運営しようと思ったのは?


A:東吾妻町の協力隊OGで民泊施設の管理をしている田中さんの話を聞いて、高山村にも宿泊需要があると考え、民泊施設を思いつきました。2年目には物件探しを始め、好条件の古民家が見つかったのですが、そこは銀行の融資が通らず諦めざるを得ませんでした。そんなとき、村の人から、築70年くらいの家が空き家になったことを教えてもらったんです。3年目の終わり頃には、元の住民の家財道具を整理して改装を始め、退任後の2021年3月に土地と家を購入しました。資金には国の起業補助金制度を活用しましたが、これも私の起業に当たり村が動いてくださって実現したことです。
コロナ禍でイベント関係が全く開かれなかったので、任期中も起業に向けての準備に集中できたことは、逆に良かったと思っています。
壁やふすま、手すりの取り付けなどの改装は、ほとんど自力で行いました。そのため、開業までにかなりの期間を要しましたが、2022年10月、一棟貸し古民家「くまさんのおうち」のオープンにようやくこぎつけたところです。
最大20名泊まれるので団体の宿泊客がターゲット。世界的な民泊専用サイトAirbnbに登録して予約を受け付けています。コロナが落ち着けば、インバウンド需要も見込めると思っています。
体験・交流型民泊施設というコンセプトで、収益が村の中で回せるように、野菜の収穫体験やうどん・そば打ちなど地元の人を巻き込んだ体験プランもいろいろ考え中です。


Q:他の協力隊員との関係はいかがですか?

A:隊員仲間との縁は今も続いていて、情報をもらったり、助けてもらったりしています。みんなそれぞれ得意なことがあるので、とても心強いです。
例えば、プリンの容器は川場村OG隊員の丸山さんにデザインしてもらいましたし、民泊施設の案内看板やパンフレット、これから始めようとしているさまざまな体験プランなど、現役隊員やOBOGに協力してもらうこともたくさんあります。
また、活動の中で、たくさんの村の人たちとのつながりができたことも大きな収穫でした。協力隊員でなかったら、こんなに人脈は広がらなかったと思います。


Q:退任後の生計の立て方やこれからの目標は?

A:小学生向けのロボットプログラミング教室を開いている関係で、教育委員会から委託され、中学校で週3回ICT教育の補助をしています。今は、その収入とsateraの活動で生計を立てています。民泊施設の開業準備もあったので、ちょうどいい働き方ですね。
これからも、時代の流れや社会の変化を見極めながら、必要とされる事業を柔軟に考えていこうと思っています。目標は、高校卒業後に村を離れた子たちが誇りを持って戻ってくるような村にすること。そのために、民泊施設で若い人を雇えるくらい利益を出して、株式会社化するのが夢です。


Q:地域おこし協力隊を目指したいという人にアドバイスがあれば。

A:市町村の考えと自分のやりたいことにずれがあって、苦労している隊員が多いと聞きます。役場の担当者は年度で異動することが多いので、柔軟に対応できないとなかなか厳しいです。だめなら他を考えようというくらいにゆとりを持つことも必要ですね。
私の場合は、最初から起業を目指していたので、協力隊の活動がステップアップにつながりました。先々やりたいことがあるなら、最初にきちんと話して、よく理解してもらうことが将来につながると思います。

(取材日:2022/12/6)