養蜂家として自立したいという夢をかなえるために。
Q:みどり市の地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。
A:千葉市出身ですが、大学は農業大学で、卒業後に養蜂業者に就職しました。そこで1年間、千葉県から北海道まで移動しながら養蜂を経験しました。実際にやってみて、これを一から自分で取り組み、事業化したいという気持ちが強くなっていきました。
実は、みどり市には父親の実家があって、一昨年に祖父が亡くなって祖母が一人で暮らしていたんです。住む家もあり、養蜂には適した土地だったので、「ここで養蜂を始めよう!」と。そんなとき、ちょうどみどり市の地域おこし協力隊の募集があったので応募しました。たとえ採用にならなくても自分でやりたいと、もうハチも購入していたんですよ。
面接のとき、養蜂業をやりたいという希望を伝えたところ採用していただけたので、軌道に乗るまでの3年間は制度を活用することにしました。
Q:実際の活動内容について教えてください。
A: 私は初めから養蜂で自立すると決めていたので、活動時間は養蜂が中心です。
最初に購入した6箱のハチは越冬するときに減ってしまい、春には4箱になりましたが、少しずつ増やして今は16箱まで増えました。越冬中は巣箱を保温して、越冬用の砂糖水と花粉をエサとしてあげています。春になって、花の蜜を集められるようになったらエサをやめ、砂糖水の蜜を搾って、花の蜜だけを集めるようにします。
蜜を集め始めて、だいたい1カ月で絞れるようになります。蜜が採れるのは4月から7月初旬まで。それ以降になると、糖度が基準を下回ってしまうんです。1カ所で搾れるのは多くて3回くらいですね。今年のハチミツは30kgくらい採れましたが、まだまだです。
蜜を搾る機械も購入しました。その際、隊員としての活動費を使わせていただけたのは、ありがたかったですね。
搾ったハチミツは、ビンを仕入れて、ラベルもパソコンで自作しました。ラベルのミツバチのイラストは、隊員OBの幸田さんに描いてもらったものです。
商品として販売できる形は一応整いましたが、任期中は活動時間に販売することはできないことになっているので、時間内にどこまでやっていいか相談しながら進めています。
蜜を採れる期間は3カ月くらいですが、巣箱の手入れなどハチの世話は1年中行う必要があります。天敵のスズメバチから守ったり、ダニが繁殖したりしないよう、常にチェックを怠ることはできません。
Q:養蜂以外にも隊員として何か活動をしていますか。
A:有害鳥獣対策ということで罠の免許を取得しました。ただ、猟銃の免許はないので、とりあえず罠の設置だけです。設置する場所は山の中ではないので、獲物がかかったことはないですね(笑)。みどり市では、免許の取得を勧められて4名ほどの隊員が罠の免許を取得しています。なかなか本業にはなりませんが、鹿の皮をなめしている隊員もいますよ。
それと、去年の冬は1、2カ月間、干し芋農家の手伝いをしました。干し芋づくりは、今年の冬も手伝いの依頼があるかもしれませんが、今年はミツバチの巣箱作りや巣箱のチェックなどがあり、時間が限られるかもしれませんね。
毎日、勤務状況を記録していて、月1度報告します。市役所内に机を用意していただいているので、週1回くらい活動報告書の作成やメールチェックなどを行っています。
Q.他の隊員と一緒に活動することもありますか。
A.みどり市の隊員は現在9名いて、他市町村より多いと思います。お祭りのときなど、市のイベントでは一緒に活動しています。また、月に一度全員で集まる機会には、みんなで自分の活動を報告し合っています。ただ、養蜂を手伝ってもらうことはありませんね。ハチに刺されることもありますから(笑)。
Q:みどり市に暮らしてみた感想は?
A:父の実家で毎年来ていましたから、それほどカルチャーショックはありませんでした。東地区は山間部なので、多少不便なのはしょうがないと思っています。インターネットがあるので、情報関係の不満はありませんよ。買い出しがちょっと不便なくらいですね。
Q.任期終了後を見据えて、将来的な目標を教えてください。
A.80箱くらいまで増やして、養蜂業を本業にするのが目標ですが、なかなか難しい。天敵のスズメバチに襲われたり、女王バチがいなくなったり……。今年度は20~30箱くらいまで増やしたかったけれど、目標には届きませんでした。
いずれにしても、任期中にどんどん数を増やして、任期終了後には自分に合ったやり方で商品化して販売にも力を入れたいです。
ハチの数が増えたら箱を移動して、蜜を集めたいとも思っています。今は近くの様々な花の蜜を集めた百花蜜ですが、将来的には、アカシアの蜜などを集めたいですね。
いずれは2トン車を購入して、本格的な移動養蜂にも取り組みたいです。移動した場所で2日間くらいずつ車中泊して、蜜を集める方法です。たくさん採れるようになったら、ビン詰でなくても一斗缶売りとかでもいいかなと。
Q:これから地域おこし協力隊を目指そうと思っている人へ。
A:将来に向けてのビジョンを持つことが大事ではないでしょうか。やりたいことが見つからずに、とりあえず応募するという人もいるかもしれませんが、やりたいことが決まっていて、それに向けて制度を活用するという方法もあります。自分のビジョンを職員の人に理解してもらえば、かなり自由に活動できるので、3年間を有効に使いながら夢を追えると思いますよ。